最新記事
米大統領選

米民主党大会でインフルエンサーが存在感、若年層にリーチ

2024年8月23日(金)00時00分
インフルエンサー

8月22日まで開催されている米民主党全国大会では、人気SNSで活躍するインフルエンサーが取材を認められた上で作業スペースも優遇されるなど、新聞やテレビといった既存メディアの記者と存在感を競っている。写真は会場で写真を撮るインフルエンサー。シカゴで19日撮影(2024年 ロイター/Cheney Orr)

22日まで開催されている米民主党全国大会では、ユーチューブやTikTok(ティックトック)、インスタグラムなど人気SNS(交流サイト)で活躍するインフルエンサーが取材を認められた上で作業スペースも優遇されるなど、新聞やテレビといった既存メディアの記者と存在感を競っている。

大会はイリノイ州シカゴのアリーナ「ユナイテッドセンター」で4日間にわたり開かれ、200人以上の「コンテンツクリエーター」が参加を許可された。若年層を中心に多数のフォロワーを持つインフルエンサーの影響力を取り込んだ民主党大会は初となる。


 

インフルエンサーを含むクリエーターには会場内にラウンジが設けられ、党大会が開かれているフロアに動画コンテンツ作成の作業スペースも設置された。

ピュー・リサーチ・センターによると、既存メディアのジャーナリストが作業できる場所は過去の大会に比べて削減された。

米紙ピッツバーグ・ポスト・ガゼットの政治担当編集者ジョナサン・D・サラン氏は「私がこれまで取材した20回の党大会の中で最悪の労働条件だ」と嘆いた。

英紙インディペンデントのホワイトハウス特派員アンドリュー・ファインバーグ氏はX(旧ツイッター)上で、取材しようにもテレビカメラ撮影ブースの近くに行くことが制限され、作業スペースも非常に高いところに設置されて危険だと不満を述べた。

民主党の大統領候補に指名されたハリス副大統領を支援する基金「サースト・フォー・デモクラシー」を立ち上げたインフルエンサーのクオンディ・ウンティニ氏は自身が持つXのフォロワー4万7400人とTikTokの約1万4000人のフォロワーに向けて写真や動画を投稿した。

ウンティニ氏はそうした投稿の中で、ジョージア州選出のラファエル・ワーノック上院議員と笑い合ったり、下院民主党トップのジェフリーズ院内総務の側近とポーズを取っている。

ハリス陣営のデジタルストラテジスト、ロブ・フラハティ氏はポリティコのイベントで従来メディアとコンテンツクリエイターについて言及し、一方がもう一方に「取って代わられることはない」と指摘。「有権者は従来より多くの媒体から情報を取得しており、クリエーターがハリス氏や(副大統領候補の)ウォルズ氏の宣伝マンになるとは期待していない」とした。

若年層に強み

従来型の報道機関は中立の立場をうたい、記事を編集するデスクを置いて事実確認の基準もあるが、米国では数年前から保守派による偏向報道批判の的になっている。一方、左寄りの国民の多くは主流メディアによるハリス氏の報道が性差別的などと主張している。

一方、TikTokで550万人のフォロワーを持ちハリス氏を支持するインフルエンサーのジョッシュ・ヘルフゴット氏は、投稿の作成や編集など全て自分一人でやっていると明かす。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校で政治コミュニケーションを専門にするダニエル・クレイス教授は、SNSで拡散するインフルエンサーの動画が政治にあまり関心がない有権者の熱意を誘うのに役立つと語る。選挙陣営が若い有権者にアピールする際にも活用できるとした。

民主党大会に参加したインフルエンサーのイブ氏は「私たちは特に若い人たちにリーチしている」とし、11月の大統領選に「大きな影響を及ぼすことが私の望みだ」と語った。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241217issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月17日号(12月10日発売)は「韓国 戒厳令の夜」特集。世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均2カ月ぶり4万円、日米ハト派織り込みが押し

ワールド

EU、防衛費の共同調達が優先課題=次期議長国ポーラ

ワールド

豪11月失業率は3.9%、予想外の低下で8カ月ぶり

ワールド

北朝鮮メディア、韓国大統領に「国民の怒り高まる」 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 5
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 6
    ノーベル文学賞受賞ハン・ガン「死者が生きている人を…
  • 7
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 8
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 9
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 10
    統合失調症の姉と、姉を自宅に閉じ込めた両親の20年…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社…
  • 6
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 7
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 8
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 9
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中