最新記事
途上国のDXと生成AI

「世界のモバイル決済額の7割がサブサハラ」アフリカでDXが進みやすい3つの理由...日本にも恩恵?

2024年3月6日(水)16時00分
※JICAトピックスより転載

jica_dxai_fukatsu.jpg

深津貴之さん。日本のインタラクションデザイナー。note株式会社CXO。株式会社THE GUILD代表取締役。横須賀市AI戦略アドバイザー。

世良 反対にデメリットはあるのでしょうか。

深津 デメリットとしては紛争や内戦が起きている地域で、生成AIを使ったプロパガンダやフェイクニュースが広がるといった恐れはあるかもしれません。ただ、これはアフリカに限らず、世界で起こりうることです。アフリカの人々にとっては「エンジニアとして外貨を稼げる」といったメリットのほうが大きいと思います。

宮田 データ流通を規制しすぎることでデメリットが生じる場合もあると思います。例えば、アフリカではなくアジアの例ですが、ある国で森林保護の状態を地図上にマッピングしてデータ化したものがあります。これを近隣諸国と共有すれば保全活動にさらに役立つのですが、その国では政府が「外部に持ち出し禁止」というスタンスでした。そのため、JICAでは個人情報の保護などに留意しつつ、信頼性のあるデータを流通させる「データフリーフロー」が必要ではないかといった提言を行っています。

次に来る生成AIマルチモーダル

世良 今後、国際協力に生成AIは活用できるのでしょうか。

深津 高度な人材が必要だけれど、なり手が少ないなど人材が足りない部分や、人のスキルの水準にばらつきがある場合に、生成AIをアシスタントにすることでクオリティを標準化することに使えるのではないかと考えます。

宮田 例えば、途上国で農業を教える農業普及員の知見の共有にも役立つと思います。ある国では「土をなめて、まく種を決める」といった経験や勘に頼った農業を行っている地域があるのですが、AIが農業普及員を支援することで、このような勘に頼らない農業ができるようになるかもしれません。

伊藤 ではここで、公開されている農業普及員向けのマニュアル等をベースに、深津さんにChatGPTをカスタマイズして農業普及員のアシスタントとなるAIを作成して頂きました。実際に世良さんには新米農業普及員になって、パキスタンの農家の人の相談に乗って頂きますが、そのサポートとして生成AIを活用します。私は農家役になって質問します。「実は最近、オロバンチに困っています。どうしたらいいでしょうか」。

世良 オロバンチ......初めて、聞きました。生成AIに質問してみます。

生成AIの回答 オロバンチは寄生植物です。オロバンチの発生を防ぐためには、土壌の健康状態を維持することが重要です。適切な肥料管理と土壌の改良が必要です。

jica_dxai_ai.jpg

深津さんがカスタマイズしたChatGPTの回答画面

世良 回答が出ました。「寄生植物」と言っていますね。

伊藤 回答はあっていますね。

深津 こうした生成AIを農業普及員が持つか、農業普及員がオフィスで使うのがおすすめです。現在の生成AIは性能が安定していないので、間違った回答をする可能性があります。それを直接一般ユーザーに伝えるのはリスクがあるので、あくまで最初は「職員のアシスタント」として使ったり、シニアの職員がクロスチェックをしたりするほうがいいと思います。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米国に抗議 台湾への軍用品売却で

ワールド

バングラデシュ前首相に死刑判決、昨年のデモ鎮圧巡り

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機100機購入へ 意向書署名とゼ

ビジネス

オランダ中銀総裁、リスクは均衡 ECB金融政策は適
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中