最新記事
途上国のDXと生成AI

「世界のモバイル決済額の7割がサブサハラ」アフリカでDXが進みやすい3つの理由...日本にも恩恵?

2024年3月6日(水)16時00分
※JICAトピックスより転載
深津貴之さん、世良マリカさん、宮田真弓さん

左からTHE GUILD代表取締役の深津貴之さん、タレントの世良マリカさん、JICAチュニジア事務所長の宮田真弓さん

<アフリカのDXを支援する中でJICAが得てきた知見は、今後どのように日本に生かされるのか。また、途上国で生成AIが普及するメリットとデメリットとは? テクノロジーと国際協力に詳しい専門家をゲストに迎え、タレントで大学生の世良マリカさんと一緒に「途上国のDXと生成AI」について考える>

現在、世界では気候変動や食料危機など、さまざまな問題が起きています。そのような問題の現状や解決策について、「世界をもっとよく知りたい!」と意欲を持つタレントで大学生の世良マリカさんと一緒に、各界の専門家をゲストに招いて考えます。第2回のテーマは「途上国の DXと生成AI」。インタラクションデザイナーで生成AIにも詳しいTHE GUILD代表取締役の深津貴之さん、DXで国際協力を推進するJICAのSTI・ DX室の前副室長で、現在はチュニジア事務所長の宮田真弓さんにお話を伺いました。

>>●動画はこちら

jica_dxai_1.jpg

ルワンダのICT教育の様子(さくら社提供)

全世界のモバイル決済額の7割は「サブサハラ」

JICA チュニジア事務所長 宮田真弓さん(以下、宮田) 下の写真をご覧ください。これはある国のお札の一部なんですが、一体どこのお札だと思われますか。

世良マリカさん(以下、世良) どこでしょう。ちょっとわからないですね。

宮田 これはアフリカのルワンダの500フラン札です。パソコンに向かう子どもたちの姿が描かれています。ルワンダでは実際に1人1台ノートパソコンを使って授業が受けられるように整備するという計画が進行中で、とてもICTが進んでいるんです。JICAもこの取り組みを支援しています。

jica_dxai_osatsu.jpg

ルワンダの500フラン札の一部

jica_dxai_miyata.jpg

チュニジア事務所長の宮田真弓さん。日本のIT業界や、ブータン及びカンボジアでICT分野の国際協力事業に従事後、2010年JICA入構。経済開発部民間セクター開発グループ、ガバナンス・平和構築部STI・DX室副室長を経て現職。この日はチュニジアからオンラインで参加。

宮田 また、アフリカ全土でM-PESAというモバイルマネーが普及するなど、全世界のモバイル決済額の7割が「サブサハラ」といわれるサハラ砂漠以南で占められているんですよ※1。

※1GSMA2023による。

世良 全世界のモバイル決済の7割も!それはすごいですね。

THE GUILD 代表取締役 深津貴之さん(以下、深津) アフリカは有線のADSLやISDNといった古いインフラがなかったので、逆に急速にデジタル化が進みました。いきなりモバイルからスタートしたので、社会制度やビジネスも新しいものを取り入れやすいのですね。

宮田 そうですね。ヘルスケア分野でもデジタル化が進んでいます。例えば、ナイジェリアの救急医療対応サービス「エマージェンシー・レスポンス・アフリカ(ERA)」では、月額13ドルほどの会費で救急車を呼べます。公的機関の救急医療は機能していないことが多いのですが、ERAに電話をすると、医療スタッフがすぐに来てくれます。また、ルワンダでは英国拠点のBabylon Holdings Limitedによる生成AIチャットドクターが導入されており、「頭が痛い」「喉が痛い」といった症状をチャットで答えると、病院に行く、行かないを判断してくれます。

jica_dxai_era.jpg

ERAの救急搬送に用いられる車

進行補佐・JICA広報部 伊藤綱貴さん(以下、伊藤) 深津さん、日本ではどうしてDXが進まないのでしょうか。

深津 やはり、既存のインフラがしっかりしていることが大きいのではないでしょうか。例えば119番をしたら救急車が来てくれるとなると、「今からDXを活用した救急医療対応や遠隔医療を始めよう」となりにくいのでは。日本では初期投資に莫大な費用がかかる、といった問題もあると思います。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中