ウクライナが負けるなら、その領土を奪おうと画策する勢力がヨーロッパにある
NATO far right's plot for Ukraine land "exactly what Putin wants"
ヨーロッパにおける極右の対等はロシアの思う壺だ(2023年6月13日、ストラスブールのEU議会)REUTERS/Yves Herman/File Photo
<現にNATO諸国の一部にも、ウクライナ西部地域の領有権を主張する政府や政党が表れはじめた>
NATO加盟国の2つの極右政党が、ウクライナの一部地域について領有権を主張し始めた。その背景には、これらの地域を支配下に置いて、ロシアのウラジーミル・プーチンがウクライナ戦争で勝利した場合に取引材料にしたいという考えもあるようだ。
ウクライナとロシアの戦闘が始まってまもなく2年、ルーマニアの極右政党「ルーマニア統一同盟(AUR)」とハンガリーの極右政党「わが祖国運動(OHM)」は、何百年も前に遡る領有権問題を引き合いに出して、ウクライナ西部の一部地域を併合する可能性を示唆している。
本誌はこの2つの政党の主張について、ウクライナ外務省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。
AURの共同党首であるクラウデュ・トゥルジウは、先週行った演説の中で、「自然な国境線の中にあるルーマニアを取り戻すまで、真の主権を持ったとは言えない」と主張。ウクライナ西部のベッサラビアや北ブコビナ、ザカルパッチャにはルーマニア系住民とハンガリー系住民が暮らしていると述べた。
トゥルジウは「ベッサラビアを取り戻すべきだ」と述べ、さらに「北ブコビナも忘れてはならない。ベッサラビア南部、ヘルトサ、ザカルパッチャも、かつてルーマニアのものであり、今もルーマニアのものである地域は全て、再びルーマニアに戻るべきだ」と主張した。「ルーマニアが世界をリードする国の一つになることが、我々の目標だ」
ハンガリーとルーマニアが同時に主張を始めた
ハンガリーOHMの党首であるトロツカイ・ラースローも、ウクライナの最西端にあるザカルパッチャ州の領有権を主張する考えを示した。
OHMのウェブサイトに投稿された動画の中で彼は、「ウクライナでの戦争についての我々のメッセージは、とてもシンプルなものだ。即時停戦、和平と交渉による解決だ」と述べた上で、さらにこう続けた。「この戦争の結果、ウクライナが国家としての地位を失うこともあり得る。その場合、ハンガリーの政党で唯一この立場を取っている我々としては、ザカルパッチャの領有権を主張していく考えだ」
ルーマニアでもハンガリーでも、特に極右のナショナリストの間では以前からこのような主張があった。だが注目は、こうした考え方が主流派の中にもみられることだ。たとえばハンガリーのオルバン・ビクトル首相は2022年11月、ウクライナの一部をハンガリーの領土とする地図がプリントされたサッカーマフラーを身につけ、ルーマニアとウクライナの怒りを買った。
ウクライナ議会の外交委員長を務めるオレクサンドル・メレシュコ議員は本誌に対し、このタイミングでルーマニアとハンガリーが同時に領有権を主張し始めたことは、ウクライナにとって懸念材料だと語った。