台湾有事にも影響大... ドイツの元軍人に中国空軍への機密情報漏えい疑惑【注目ニュースを動画で解説】

Newsweek Japan-YouTube
<元ドイツ空軍パイロットが10年ほど前から中国空軍の訓練に協力していたというスキャンダルと、その脅威について解説したアニメーション動画の内容を一部紹介する>
6月2日の独シュピーゲル誌に掲載された記事で、ドイツ軍の元パイロットが中国空軍に戦術や機密情報を漏らした疑惑が発覚した。このことは欧米にとってどんな脅威になり得るのか。スキャンダルの背景に何が──。
本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「「戦術が筒抜け?台湾有事にも影響大 元ドイツ空軍パイロットに中国への機密情報漏えい疑惑【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。
シュピーゲル誌は「彼らが軍事的な専門知識や戦術上の機密情報を(中国空軍に)伝えたり、台湾侵攻などのシナリオで訓練したりしている可能性は非常に高い」というドイツ安全保障当局者のコメントを紹介した。
元パイロットたちは冷戦時代とその直後にドイツ空軍が得意とした、敵防空網の制圧(SEAD)と破壊(DEAD)のノウハウ、他にはNATOの航空作戦における戦闘機の編成や装備体系も教えた可能性がある。これらの知識は、台湾有事で中国が制空権を握ろうとするときに大いに役に立つとみられる。
2022年10月には、元イギリス空軍パイロット(少なくとも30人)が、中国空軍に助言を与えているという報道もあった。ドイツやイギリスの元軍人が個人ベースで中国に協力できた背景には、ヨーロッパの中国に対する甘い認識がある。
「最もきなくさいのは米中対立であり、ヨーロッパは部外者」という認識が、ヨーロッパが中国の軍事的野心に無頓着である理由だ。
アメリカの軍事立案者は分業体制を考えている。ヨーロッパはロシアに対して自己防衛し、一方のアメリカは中国の軍事侵略を阻むためにアジアに注力するという体制だ。
ヨーロッパが中国の軍事的脅威を真剣に捉えられない理由には、「ヨーロッパは台湾有事よりも、自身の防衛に尽力せよ」というアメリカのメッセージの影響も挙げられる。
敵に手の内を明かせば、アジアに限らずどこでも戦争の抑止が困難になる。精密誘導弾、長距離防空システム、無人航空機、ISR(情報・監視・偵察)用航空機などといった高性能な兵器を、アメリカは全世界で展開できるだけの数を持ち合わせているわけではない。
ヨーロッパが中国に協力してしまうと、アメリカはより多くの軍備を中国に移さざるを得なくなるのだ。
今年6月3日、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は中国の李尚福(リー・シャンフー)国防相と会談し、戦闘機パイロットの訓練にドイツ空軍の元軍人を雇うのをやめるよう要請した。
今こそヨーロッパは甘い認識を捨てなければならない。口頭での要請だけでなく、国民と企業が人民解放軍を支援することを全面的に禁止する法律を制定すべきだ。
中国のアジアにおける軍事侵略は、直接的にも間接的にもヨーロッパの安全保障に悲惨な結果をもたらすことになるのだから。
■詳しくは動画をご覧ください。
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