ゼロコロナ後の中国、あらゆる問題で自国の安全保障に注力 外交・ビジネスで多くの「矛盾」も
新型コロナウイルスの感染封じ込め対策として2020年から実質的に国境を封鎖してきた中国政府が、その厳格な「ゼロコロナ」政策を解除して数カ月が経過した。写真は2019年6月、モスクワを訪問した習近平氏を迎えるプーチン露大統領。代表撮影(2023年 ロイター)
新型コロナウイルスの感染封じ込め対策として2020年から実質的に国境を封鎖してきた中国政府が、その厳格な「ゼロコロナ」政策を解除して数カ月が経過した。この間、中国は外交、ビジネスの両面で一見して矛盾するような措置を立て続けに打ち出し、識者の多くはその意図に首をかしげている。
自国の安全保障への関心を強める中国は、米国との対立も深まりつつある。ゼロコロナ政策の制約が解除された中国が、国際社会に復帰するのではなく、西側からの隔絶という新たな局面に入ってしまうことをアナリストらは懸念している。
いくつかこの「矛盾」の例を挙げよう。中国はウクライナの和平を促進する一方で、侵略の当事者であるロシアとも対話を続けている。西側諸国のリーダーたちの来訪を熱烈に歓迎する一方で、民主主義国家である台湾を巡る緊張をエスカレートさせている。外国企業の経営者に秋波を送る一方で、国内ビジネス環境に閉塞感をもたらす措置をとっている。
相反するメッセージに見えるものは、習近平国家主席が改めて国家安全保障に関心を注いでいることの結果であり、ライバルである超大国の米国との関係がどん底状態にあることでその傾向に拍車がかかっていると、アナリストらは指摘する。
リー・クアンユー公共政策学院(シンガポール)のアルフレッド・ウー准教授は、「今や、経済から外交に至るまで、ありとあらゆる問題に対して安全保障が優先されているというのが中国の厳しい現実だ」と話す。
ウー氏によれば、中国はウクライナ危機などの重要な地政学的課題に対して影響力を発揮したいと考える一方で、何よりもまず自国の安全保障を重視している。このため、外交関係や、世界第2位の規模を誇る経済を再活性化させる計画にも、部分的に支障が生じているという。
「口ではあれほど外部の世界に対してオープンでありたいと言っているにもかかわらず、中国はだんだん閉鎖的になっている」
習近平氏は昨年10月、国家指導者として前例のない3期目の続投を確実にした後の演説で、政治や経済からテクノロジーや領土紛争まで広範な課題を含む概念である「国家安全保障」を強調した。
その後3月に全国人民代表大会で行われた演説は、さらに露骨な内容だった。中国の安全保障は、その台頭を封じ込めようとする米国の企てによる挑戦を受けている、と習氏は語ったのだ。
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