最新記事
イギリス

「聖界正義の剣」「鳩の王笏」...謎のアイテム続出の戴冠式、英国人にも意味不明だった

CROWN MADNESS

2023年5月9日(火)18時06分
イモジェン・ウェストナイツ(ロンドン在住ジャーナリスト)
チャールズ3世の戴冠式

本番と同じ衣装を着けて行われたリハーサルには、実際の式典でチャールズが乗る「ゴールド・ステート・コーチ」も登場(5月3日) HENRY NICHOLLSーREUTERS

<聖エドワードの王冠をかぶった国王陛下に忠誠を──イギリス人にも意味不明で時代錯誤な式典の意味>

英国王の戴冠式(コロネーション)って何なの? イギリス人である筆者はこの数週間に何度か、外国出身の知り合いにそう質問された。話題になっている数々の奇妙な儀式は何なのか。「メイス(職杖)」という金色の大きな棒が出てくるのはなぜか。毎回、こんな感じなのか──。

実を言えば、私たちにも答えはさっぱり分からない。

イギリス人は時代錯誤的な変人だと思われたとしても、特に多くの英国民が時代錯誤に興じているような状況では当然だろう。イギリス人とは、歯並びの悪い歯でアナグマの煮込み料理を食し、古風な挨拶を交わす人々で、彼らにとって「運命の石」といった物体はハンバーガー並みに普通のものなのだ、と。

確かに、5月6日の英国王チャールズ3世の戴冠式については、詳細を知り尽くしているだろう歴史オタクや王室支持者がイギリスにはあふれている。それでも英国民の大半は、何もかもが意味不明な大騒ぎだという意見に同意するはずだ。

戴冠式の数カ月前から報じられてきた式典の内容は、まるでシュールな夢のようだ。戴冠式の舞台は、英王族の結婚式や葬式などが行われるロンドンのウェストミンスター寺院。式を執り行うのは、ちょっと地味なイギリス版教皇といった存在のカンタベリー大主教だ。ここまでは、それなりに納得できる。

だが連日、全国民が知っていて当たり前のように、ニュースで「献納の宝剣」といった名称が飛び交う状況となると......。

戴冠式では、長年のしきたりらしい「宣誓」や「塗油」や「即位」というプロセスの一環として、さまざまな品が姿を現す。

チャールズがかぶる純金の「聖エドワード王冠」は重さ約2.2キロ。「戴冠の椅子(聖エドワードの椅子)」に座り、権力や慈悲を象徴する「十字架の王笏(おうしゃく、君主の杖)」と「鳩の王笏」、およびキリスト教世界を象徴する「宝珠」を手にする。

ほかにも「俗界正義の剣」「聖界正義の剣」「慈悲の剣」「聖エドワードの笏」「職杖」「国剣」が続々登場。どれも特定のやり方で持たないと、神様のお気に召さない。ウェストミンスター寺院への入場を先導した十字架「クロス・オブ・ウェールズ」には、キリストがはりつけにされた十字架の一部という触れ込みの木片が組み込まれている。

戴冠式のクライマックスの1つである塗油で使われるのは、エルサレムで祝福を受けた聖油を入れた「アンプル」だ。ワシの形をしたアンプルのくちばし部分から注がれた聖油が、カンタベリー大主教によってチャールズの手などに塗布される。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ノーベル賞逃し軌道修正 「もう平和だけ

ワールド

イラン、インターネット遮断解除検討か 国営TVハッ

ワールド

米の脅迫に屈さず、仏独財務相 反威圧措置も選択肢に

ワールド

高市首相23日解散表明、投開票2月8日 与党過半数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 2
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 5
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 6
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 9
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 7
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中