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「ロシア軍は今もNATO軍の深刻な脅威」──米欧州軍司令官

Russia's 'Eroded' Ground Forces Have Run Into 'Big Problems'—U.S. General

2023年5月16日(火)16時17分
デービッド・ブレナン

米欧州軍のカボリ司令官(1月9日、スウェーデンのサレン) TT News Agency-Henrik Montgomery-REUTERS

<ロシア陸軍の弱さを見て全体や将来を判断するのは安易すぎる、と米欧州軍司令官。現に空軍、海軍は健在で戦線拡大の可能性もある>

米欧州軍司令官のクリストファー・G・カボリ米陸軍大将は、ロシアの軍事力について、ウクライナ侵攻によって損害を受け「大きな問題にぶつかっている」にもかかわらず、依然として北大西洋条約機構(NATO)にとって深刻な脅威となっていると警告した。

エストニアのタリンで開かれた、外交・安全保障に関する第10回レンナルト・メリ会議で5月14日に講演したカボリは、西側のオブザーバーたちに向かって、ウクライナの戦場におけるロシア陸軍のたびかさなる失敗をもとに拙速な結論を出してはいけない、と訴えた。

「ウクライナにおけるロシア軍の失敗については、きわめて詳細に分析する必要がある」とカボリは述べた。「状況は一様ではない。現状を見て、ロシア軍が崩壊した、もしくは深刻な状況にあると考えるのは安易だ。実際には、状況にむらがある」

「ロシア地上軍は多大な損害を被り、大きな問題にぶつかっている。また、多くの人員、多くの装備も失っている。その一方で、多くの人員を受け入れてもいる。ご存じのとおり、現在のロシア地上軍は、この戦争が始まった時よりも大規模になっている。つまり、今も健在だ」

空軍・海軍はほぼ無傷

「空軍が失った戦闘機と爆撃機は100機に満たない。まだ1000機前後が残っている。海軍はほとんど何も失っていない。サイバー軍、宇宙軍も同様だ。ロシアの軍事力について語るにはそのすべてを分析しなければならない。すべての分野において、ロシアの将来的な軍事力に対応できる備えをする必要がある」

ウクライナで失われたロシアの人命の規模については、いまだ明らかになっていない。ウクライナ政府の主張によれば、2022年2月24日の全面的な侵攻開始以来、ほぼ20万人のロシア兵を「一掃した」という。同時期に20万人近いロシア兵が死傷したとする米国の推定とおおむね一致している。

カボリも述べたように、ウクライナ軍が最近、破壊されたバフムト周辺の領土をロシア軍から奪い返しているとの報告が入り始めている。ウクライナ軍による春の反転攻勢も、予想されている。ニューズウィークはロシア国防省にコメントを求めている。

欧州の当局者は過去に本誌に対し、ロシアのエリート部隊は30〜40%の損失を被ったと述べている。ここでいうエリート部隊とは、他国からの侵攻に備えた前衛部隊として、NATO加盟国との国境沿いに配備されていた部隊を含むものだ。

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