最新記事
欧州

ロシアと国境接するフィンランド、NATO正式加盟 ロシアは「対抗措置」警告

2023年4月5日(水)08時15分
ロイター
NATOの旗

フィンランドは4日、北大西洋条約機構(NATO)に正式に加盟した。2021年10月撮影(2023年 ロイター/Pascal Rossignol)

フィンランドは4日、北大西洋条約機構(NATO)に正式に加盟した。フィンランドはロシアによるウクライナ全面侵攻を受け、長年の中立政策を転換。ロシアはNATOの拡大に「対抗措置」を取ると警告した。

フィンランドのハービスト外相がブリュッセルのNATO本部で米国のブリンケン国務長官に公式文書を手渡し、フィンランドのNATO加盟手続きが完了。NATOのストルテンベルグ事務総長は「フィンランドの加盟を歓迎する」と述べた。

ストルテンベルグ氏は、ロシアのプーチン大統領はNATOの東方拡大を食い止めることをウクライナ侵攻の正当的なの理由の一つに挙げているが「正反対の結果になっている」と指摘。ブリンケン長官も「ロシアのプーチン大統領は阻止したいと考えていることを逆に引き起こしてしまった」とし、フィンランドの加盟実現は「プーチン氏に感謝すべきことかもしれない」と述べた。

フィンランドのニーニスト大統領はストルテンベルグ事務総長との共同記者会見で、NATOに対するフィンランドの最大の貢献は自国の領土防衛だと表明。「フィンランドにとっても、NATOにとっても重要な日になった」と述べた。

フィンランドとロシアの国境線は約1300キロメートル。フィンランドのNATO加盟により、ロシアとNATO加盟国との境界線の長さは約倍になる。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は、NATOの拡大は「ロシアの安全保障と国益に対する侵犯」とし、ロシアはフィンランドにNATO軍が配備されないか、注意深く見守ると述べた。

ロシアのショイグ国防相は、フィンランドのNATO加盟でウクライナでの紛争がさらにエスカレートする可能性が高まると警告。ただ、ウクライナでの「特別軍事作戦」の結果には影響を及ぼさないと述べた。

前日にはグルシコ外務次官が、NATOの軍などがフィンランドに配備されれば、ロシアは軍事的安全保障を確実に確保するための追加措置を講じる」と警告している。

ロシアの首都モスクワでは、親ロシア派の活動家らが米大使館前で「NATOを止めろ」「NATOはナチス主義のスポンサーだ」などと書かれたプラカードを掲げ、反NATOデモを実施した。

ロシア外務省は声明で、フィンランドはNATO加盟によって世界的な舞台での自国の影響力を弱め、ロシアとの関係を損なうという危険な歴史的過ちを犯したと指摘。「フィンランド政府の軍事的非同盟政策は、長期にわたりフィンランドの国益に貢献し、バルト海地域および欧州大陸全体における信頼醸成の重要な要因だったが、今や過去のものになった。フィンランドは何も決めない同盟の小さな加盟国の1つとなり、国際問題における特別な発言力を失った。この軽率な措置は歴史が判断すると確信している」とした。

一方、ウクライナはフィンランドのNATO加盟を歓迎。ゼレンスキー大統領は「フィンランドの全ての人々に祝意を示す」とし「ロシアの侵略は、集団的、予防的保障のみが信頼できるものであることを明確に証明している」と強調した。

イエルマーク大統領府長官も「フィンランドは正しい選択をした。ウクライナにとってもNATOは重要な目標だ」と対話アプリ「テレグラム」に投稿した。

ロシアによるウクライナ全面侵攻を受けフィンランドと共にNATOに加盟申請したスウェーデンについてはトルコとハンガリーが承認しておらず、同時加盟は実現しなかった。

スウェーデンのビルストロム外相は記者団に対し、7月にリトアニアの首都ビリニュスで開かれるNATO首脳会議での加盟を望んでいると表明。フィンランドのニーニスト大統領も声明で「フィンランドのNATO加盟は、スウェーデンの加盟なしには完全ではない」とし、スウェーデンの早期加盟実現に向け取り組みを続ける方針を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米インフレ圧力、今年の最大リスク=ノルウェー政府系

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件増、継続受給は約3年

ワールド

米CNN、従業員の6%削減へ デジタル化推進の一環

ワールド

トルコ中銀、2.5%利下げ 主要金利45%に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    【トランプ2.0】「少数の金持ちによる少数の金持ちの…
  • 10
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中