温暖化対策で注目のCO2回収テクノロジー「DAC」 世界最大規模のプラントが続々と稼働するワケ
巨大なDACモジュールの組み立て風景 (c) CarbonCapture Inc.
<温暖化対策の新しい手法として話題のDACがいよいよ本格的に動き出した>
脱炭素社会を実現しようと多くの国々が対策に取り組むなか、大気中のCO2を直接吸収する新しい技術「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」を使ってCO2削減を実践する専門企業が徐々に増えている。
DACは、大気からCO2を回収しCO2フリーの(またはCO2を極力減らした)空気を放出する。集めたCO2は合成燃料や炭酸飲料に使われる。また、集めたCO2を地中深くに埋め、数年で石化させるという方法も実用化されている。国際エネルギー機関(IEA)によると、昨秋の時点で、約20のDACプラントが世界で稼働中だ。
アイスランドに、世界最大規模のDACプラント建設中
2021年9月、筆者はスイスのチューリヒで開催された国際会議「(第2回)ダイレクト・エア・キャプチャー・サミット」に出席した。DACの専門企業の代表などがスピーカーで、講演や討論が行われた。100人以上が会場を埋め、世界中から2千人を超えるライブストリーム参加者もいて、DACへの関心の高さがうかがえた。会議を主催したのは、チューリヒのクライムワークス社だ。
同社は2017年春に世界で初めて、産業規模のDACを建設して大きな話題を呼んだ。そのDACプラント「カプリコーン」はチューリヒのごみ処理施設屋上に設置され、集めたCO2は近くの農家のグリーンハウスにパイプで送られ、トマトやキュウリなどの成長促進に使われたり(濃縮したCO2を作物に与えると成長が早くなり、収穫時期も早くなるため)、スイスのコカ・コーラが炭酸水製造に使用した。年間CO2回収量は約900トンと少なかったが、画期的な一歩だった(カプリコーンは昨秋、運転終了した)。
この会議で、同社は、アイスランドで稼働を始めた2つ目のDACプラント「オルカ」を紹介した。オルカが優れているのは、年間4千トンのCO2を大気から回収する点と、回収したCO2を水に溶かして地下に埋めて石にする点だ。この石化も、同社が世界で初めて実用化した。勢いに乗る同社は、「今度は、オルカをはるかに上回るプラントを建設する予定だ」と会議で発表した。
現在、その第3のプラント「マンモス」の工事が進んでいる。マンモスもアイスランドにある。マンモスはフル稼働すれば、オルカの9倍の3万6000トンのCO2を年間に回収できるという。回収したCO2を処理する巨大ホールを中心に「CO2回収コンテナ」がぐるりと囲む設計だ。回収したCO2は地下に埋める。