最新記事

ウクライナ情勢

英、NATO戦闘機の訓練をゼレンスキーに確約 将来的な供与へ先駆け

2023年2月9日(木)08時51分
英国ウェストミンスター・ホールに到着したウクライナのゼレンスキー大統領

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、英国を訪問し首相官邸でスナク首相と会談したほか、英議員らを前に演説を行い、ロシアの侵攻に対する西側諸国の軍事支援の拡大を呼び掛けた。英国は北大西洋条約機構(NATO)の最新戦闘機でウクライナ軍のパイロットを訓練すると確約。西側の軍事的支援の象徴的な一歩となった。 写真は同日、ロンドンのウェストミンスター・ホールに到着したウクライナのゼレンスキー大統領(2023年 ロイター/Stefan Rousseau/Pool via REUTERS)

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、英国を訪問し首相官邸でスナク首相と会談したほか、英議員らを前に演説を行い、ロシアの侵攻に対する西側諸国の軍事支援の拡大を呼び掛けた。英国は北大西洋条約機構(NATO)の最新戦闘機でウクライナ軍のパイロットを訓練すると確約。西側の軍事的支援の象徴的な一歩となった。

ゼレンスキー氏の訪英は、昨年2月24日のロシアによる全面侵攻開始以降で、昨年12月の訪米に次ぐ2回目の外国訪問。9日にはブリュッセルを訪問し、欧州連合(EU)首脳会議に出席する。

ゼレンスキー氏はスナク首相との会談で「われわれの生涯で最も重要な勝利に向かって一緒に行進している」とし、英国の支援に謝意を表明した。

同時に、戦闘機を「自由のための翼」と呼び、ウクライナへの供与の必要性を改めて強調。数百人の英議員らを前にウェストミンスター・ホールで行った演説で、ウクライナは「われわれを守るパイロットに力を与え、守るために、世界から最新の航空機を提供させるために可能なことを全て行う」と述べた。

英首相府はゼレンスキー氏が到着する直前、ウクライナに対する軍事訓練プログラムを空軍にも拡大し「将来的にパイロットがNATO規格の高性能戦闘機を操縦できるようにする」と発表。時期を特定しなかったほか、戦闘機の提供を確約しなかったものの、ウクライナ支援に対する姿勢が変化していることが示され、他の国による戦闘機供与に道を開く可能性がある。

スナク首相はゼレンスキー氏との共同会見で「先進的な航空機を提供するためにはまず、それを使える兵士やパイロットの確保が必要だ。そのプロセスには時間がかかる。われわれは今日、そのプロセスを開始した」と述べた。

英国はまた、ウクライナが激化するロシアの攻勢をかわすために軍事物資の提供を直ちに開始すると表明した。

スナク首相の報道官は、英国が供与できる可能性がある戦闘機について国防相が調査すると言明。「ただ、これは長期的な解決策であり、ウクライナが今最も必要としている短期的なものではない」とした。

これに対し、タス通信は在英ロシア大使館の話として、英戦闘機のウクライナへの供与は軍事的・政治的に深刻な影響を及ぼすと警告した。

ゼレンスキー大統領は英議員に対する演説を「力強い英国の航空機に事前にお礼を言う」と述べて締めくくった。

ゼレンスキー氏はバッキンガム宮殿でチャールズ国王とも面会。チャールズ国王は「われわれは皆、ゼレンスキー氏のことを心配し、ウクライナのことを長い間考えてきた」と述べた。

ゼレンスキー氏は英国で訓練を受けているウクライナ兵にも会う。

8日夕にはパリに移動。これに合わせドイツのショルツ首相がパリを訪問し、フランスのマクロン大統領と3者会談が実施される。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中