最新記事

BOOKS

在日は「境界人」、ゴキブリ呼ばわりされることもあるが、ノブレスオブリージュを負っていい

2023年1月30日(月)06時40分
印南敦史(作家、書評家)


 東京・江戸川区育ちの私は、北区の団地育ちのKOHHににわかな興味を持った。自身は日本国籍だが、その名は父、黄達雄(こうたつお)をもとにすること。在日の父をもつラッパー、般若とともに「家族」という楽曲を発表していること。ろくでもない父への憎しみをぶつけながら、楽曲の最後では父を赦すこと(この点でも私とはちがうけれど)。
 きざでつっぱった生きざまに眉をひそめ、相手にしない大人は多いだろう。「若気の至りさ」。そんなディスりはそっちのけで、彼の生きざまやリリックは年若いファンの胸に刺さった。「韓国なんて大嫌い。けどKOHHは好き」。たとえばそんな人がいるだけでも、在日の住まうこの国にはささやかな希望が芽ばえる。(265ページより)

あくまで個人的な感覚だが、「韓国なんて大嫌い」と口にする若者はそれほど多くない気がする。それはともかくも「KOHHが好き」と口にするヘッズ(ヒップホップ・ファン)は多いし、他方ではBTSやBLACKPINKを筆頭とするK-POPも若年層にすっかり浸透している。

そう考えると、もはや若者たちは"在日の壁"を乗り越えているともいえるのではないか? 果たしてそれは、希望的観測だろうか?

在日韓国人になる――移民国家ニッポン練習記
 林 晟一 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。新刊は、『書評の仕事』(ワニブックス)。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米3月CPI前年比3.3%上昇、原油高でインフレ加

ワールド

ウクライナ高官、ロシアと和平合意に進展と表明 ブル

ワールド

訪朝の中国外相、金総書記と会談 国際・地域問題で連

ワールド

仏大統領、6月G7サミット後にトランプ氏を夕食会に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 6
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 7
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中