コロナ禍、ウクライナ侵攻、気候変動で急増するアフリカの飢餓人口。WFP・JICA専門家が考える、これからの食料安全保障
アフリカの農業を、魅力あるビジネスに変える
――将来また起こりうる食料危機に備え、今後必要な支援の方向性について教えて下さい
津村さん:食料の安全保障を包括的にみる必要があります。生産、収穫、加工、流通、販売、消費をフードシステムとしてとらえ、そこに関わる官民すべてのアクターを巻き込み、支援に取り組むことが大切。食料の備蓄体制の整備も課題です。
西アフリカのなかでも特にガンビアでは、農業が儲からないという理由から、農村から都市部への若者の人口流出が続いています。もし、農業が儲かり、魅力があるビジネスであれば、やりたいという人は多いのです。フードシステムのなかで、単に食べるためではなく、ビジネスにつながるプロジェクトをつくっていきたい。従来の貧困支援にはもう限界があると感じています。民間セクターとの連携も実現させたいです。
天目石さん:国家から個人レベルまで、食料・農業セクターの強化が不可欠です。2003年にアフリカ連合(AU)は国家予算の10%を農業や農村開発に充てるよう宣言しました。しかし、その後、開発課題の多様化もあり、多くの国々で達成されていません。食料の確保は、人間が尊厳を持って生きていくために必要です。アフリカ各国と開発援助機関は今回の食料危機を教訓に、再度、農業セクターに目を向けるべきだと考えます。そして、小規模農家などに対する現場レベルの取り組みを強化していくことが必要です。
力のない国にしわ寄せがいく現実に、問題意識を持つ
――日本でも食料価格が上昇するなど、コロナ禍やウクライナ侵攻によって引き起こされた食料危機は、遠い国の話ではありません。現在、世界が直面する食料危機を誰もが自分事として認識する必要性について、どのようにお考えでしょうか?
天目石さん:世界全体の食料の生産量は増え続けるなか、なぜ一部の地域で食料危機が起こるのか。それは、力のある、ショックへの対応能力がある国は食料を確保できる一方で、力のないショックに弱い国にしわ寄せがいくからです。日本でも食品価格が上がりつつありますが、世界には食料へのアクセス自体が脅かされている国々、人々が増えています。食料危機に注目が集まっている今こそ、私たちはまずはこの現実に対する問題意識を持たなければいけません。
津村さん:コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻で、誰もが世界的な問題を身近に感じたのではないでしょうか。日本にいてもアフリカにいても、同じ問題に直面し、相互に依存している。そのことを、まずはしっかりと認識し、理解して、それぞれがアクションを起こす気持ちになってくれれば。SDGs目標2である「飢餓をゼロに」に向け、目標である2030年には間に合わないかもしれませんが、少しでもゴールに近づけていきたい。これからも西アフリカから、現場の声を発信していきます。