コロナ禍、ウクライナ侵攻、気候変動で急増するアフリカの飢餓人口。WFP・JICA専門家が考える、これからの食料安全保障
天目石さん:まさにアフリカがさまざまなショックに弱いことが、この深刻な食料危機を招いているのだと思います。私が3年半ほどケニアにいた時、毎年のように干ばつや豪雨といった異常気象に直面しましたが、十分な策は講じられていませんでした。アフリカの国々がショックに対応できる能力を身につけていくことができるかが、今後、問われていくと考えます。
ショックへの対応能力向上に向けた、中長期的な取り組みが不可欠
――さまざまな要因が絡み合う西アフリカでの未曽有の食料危機に対処するため、今後、どのような取り組みが必要なのでしょうか?
津村さん:これまで国連WFPの職員としてアフリカで14年間、そのうち西アフリカでは、セネガル、モーリタニア、シエラレオネ、そしてガンビアで支援活動に携わってきました。国連WFPは、紛争や自然災害などの被災者に向け、食料の配布や食料を購入するための現金の支給といった緊急時の支援をしています。同時に、災害などに対応できる能力を高め、強靭な国づくりに向けた自立開発支援も担っています。特に西アフリカは、さまざまなショックに弱い国が多く、中長期的な開発支援が不可欠です。
ガンビアでは現在、地産地消の学校給食の普及プログラムを進めています。地元の小規模農家から購入した食材で学校給食を作る取り組みです。子どもたちの栄養改善を図ると共に、自立した地域社会をつくることで貧困の悪循環を断つことを目指します。また、シエラレオネではJICAと連携し、稲作やかんがい設備の技術の普及を進めてきました。
天目石さん:JICAはアフリカで、生産者が「儲かる」農業を目指すSHEP(市場志向型農業振興)アプローチや稲作振興のための共同体(CARD)を推進しています。農業分野では長期的な視野から農家の能力開発を通じて対応能力を高められるように協力に取り組んでいます。国連WFPは緊急人道支援とともに開発支援にも携わっており、ぜひ互いの強みを生かし、脆弱な国々の強靭性を高めていければと思っています。
津村さん:食料危機の問題が複雑となっているなか、さまざまな組織とお互いに補完し合いながら取り組んでいくことが重要です。なかでも、学校現場では、地産地消型の給食をはじめ、保健、栄養、教育など、さまざまな分野での取り組みがあります。ぜひ他の機関とも連携していきたいです。