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ロシア旗艦「モスクワ号」撃沈にいちばん動揺したのは、中国軍?──空母と台湾有事

The Moskva’s Lessons

2022年10月27日(木)14時51分
アレキサンダー・ウーリー(ジャーナリスト、元英国海軍将校)

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被弾して沈没寸前のモスクワ REX/AFLO

だが論文発表以降、さまざまなことが起きた。今や、将来の戦争で南シナ海が紛争の舞台にならず、誰もいない空白地帯、つまり海上の緩衝地帯になる事態も考えられる。

モスクワの事例から生まれるもう1つの問いは、軍艦はどれくらい壊れやすいのかということだ。水上艦艇がどこまで攻撃に耐え得るかを科学的に予測することは難しい。

元米海軍司令官の1人が大まかに計算したところでは、モスクワはネプチューンが命中しても5発までなら耐えられるはずだった。一方、ウィルズはフォーリン・ポリシー誌上で、3~4発程度との見方を示している。

05年に米軍は、退役した空母アメリカを標的にして沈めることを目的とした実弾演習を行ったが、その結果は今も機密指定されている。

そこで21年の論文の中でレーマンとウィルズは、1960年代に米空母で起きた複数の大規模火災のデータを基に、対艦巡航ミサイルが着弾した場合の被害を想定。フォード級もしくはニミッツ級の空母ならかなり持ちこたえられるとの結論に至った。

一方で94年には米海軍大学院の学生で海軍士官のジョン・シュルトが、沿岸での戦闘における巡航ミサイルの有効性に関する論文を書いている。

シュルトは過去にミサイルに被弾したあらゆる艦船のデータを集めて分析。艦が行動停止に追い込まれる平均被弾数は1.2発、沈没に至った平均着弾数は1.8発だったという。

モスクワが攻撃を受けた際、操船担当の乗組員は周囲への注意を怠っていたようだが、シュルトの論文でもこうした例は珍しくないことが指摘されている。

シュルトは、対艦ミサイルを迎撃する手段があるのに迎撃を行わずミサイルを被弾した艦艇を「防御可能だった標的」というカテゴリーに分類した。

迎撃しなかった主な理由は不注意や状況の混乱のほか、防御システムのスイッチが入っていなかったか機能しなかったというものだった。受ける被害の大きさは、使われた兵器のサイズや数、性能に比例する。

空母の時代はまだまだ続く

実はモスクワのように対艦ミサイルを被弾した艦艇を調べてみると、大半の場合、発射されたミサイルの数は1~2発にすぎない。

かつての対ソ連戦で想定された(現代では南シナ海を舞台に想定されているであろう)A2AD的なシナリオでは、艦艇は雨あられと降ってくる対艦巡航ミサイルをかわさなければならないことになっていた。だが、実際にはそんな例は一度もない。

モスクワは完全武装した大型艦だった。そして完全武装した大型艦の建造数を比べると、中国のほうがアメリカを上回っている。

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