最新記事

AI兵器

「AIが人間をロックし正確に狙う機関銃...」イスラエルが開発、パレスチナ難民キャンプに配備した

2022年10月21日(金)18時30分
青葉やまと

「常時あなたを撃とうと構える銃」、検問所にも

スマート・シューターはまた、パレスチナの都市・ヘブロンにあるシュハダ通りにも設置された。イスラエルメディアのハアレツ紙による情報を受け、ユーラシアン・タイムズが報じている。

この界隈では暴動が繰り返し発生しており、2重の高いフェンスで区切られた検問所がある。銃は検問所内の高所に設置され、通過する人々を見下ろしている。

パレスチナ人政策アナリストのマーワ・ファタフタ氏はTwitterにAI銃の存在を警告する動画を投稿し、「これよりディストピアなものはないだろう」とコメントした。

動画は「常時あなたを撃とうと待ち構えている自動操縦の兵器を想像してみてください」と訴え、次のように続ける。「ヘブロンの人々は、想像する必要すらありません」

検問所は日に200人ほどのパレスチナ人が、回転式のドアをくぐって行き来している。周囲一帯でも最も危険な場所のひとつであり、過去には子供を含む多くの市民が命を落としている。この現場にさらなる恐怖を与えるのか、と動画は疑問を提起している。

こちらも現在は試験導入の段階であり、実弾でなくゴム弾が装填されている。しかしユーラシアン・タイムズは、「だが西岸地区とイスラエルにおいて、ゴム弾によって永続的な怪我を負った人々の例はいくつか出ている。なかには目を失った人々もいる」と述べ、実弾でないからといって安全であることを意味するものではないと警告している。

人命をむしろ救うことがあるとの説明だが......

スマート・シューター社は米ディフェンス・ニュースに対し、既存の銃器やドローンに取り付けるモジュール式として利用可能であり、90〜95%の命中率を誇ると説明している。取り付けや取り外しは5分ほどで完了し、機敏に利用できるという。

戦場では先手を打って敵に射撃を命中させやすいことから、自らの生存率を向上する結果も期待できるとの触れ込みだ。

効果を強調するスマート・シューター社だが、疑念の声も上がっている。ユーラシアン・タイムズによると、パレスチナ人人権活動家であるイッサ・アムロ氏はハアレツ紙に対し、AI銃の誤作動が深刻な被害を招きかねないと指摘している。配備先は多くの市民が暮らす場所となっており、故障の際には多くの犠牲者を生みかねない。

アムロ氏は「私たちパレスチナ人は、イスラエルのハイテク軍事産業の実験台となってきました。産業は何が起ころうと責任を負わないのです」と述べ、人命軽視への不満を吐露した。


>>■■【動画】AIが人間をロックし正確に狙う銃 イスラエルが開発■■

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日製副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中