「映画を盗むな」の広告がむしろ海賊行為を増やしている 仏研究
このほかの観点として、『海賊行為は犯罪です』のキャンペーン広告では、車の窃盗と比較した点もよくなかったようだ。映像中に流れる「You wouldn't steal a car(車を盗むことはない)」とのキャッチーな文章が話題となり、ネットでは数多くのパロディ画像が流通した。ある画像には「車をダウンロードすることはない」と書かれており、映画と車を同列に語ることのナンセンスさを仄めかしている。
人々の反応からも明らかなように、車や鞄の窃盗などの犯罪行為と並べて論じることは悪手だった。論文は、映画の盗撮・配布行為が比較的カジュアルな犯罪であるという誤った印象を与えてしまったと論じている。
キャンペーン広告自体が海賊行為をしていた
なお、英米共同製作のこのキャンペーンは話題となり、マナーの周知という意味では成功を納めた。しかし、同時に大きな矛盾をはらんでいた。
豪ABCなどが報じたところによると、著作権侵害の防止を訴えるこの映像において、BGMが著作権を侵害していたことが判明している。製作側は否定しているものの、2006年にオランダの作曲家が国内のマナー広告に使う条件で作曲した音楽を、契約の範囲を超えて英米で無断使用していたとの指摘がある。
グロロー博士らの論文は映画のほかにも、ソフトウェアや音楽などの不正コピー防止メッセージについて、同様に過剰な公共広告は逆効果だとしている。あってはならない海賊行為だが、その撲滅は一筋縄ではいかないことを改めて示す研究となった。