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軍事ペロシの台湾訪問に反応した中国軍 衝突回避の演習が情勢を緊迫させる

ペロシ米下院議長の台湾訪問への抗議として中国は台湾周辺で6日間の軍事演習を開始した。台北で撮影(2022年 ロイター/Taiwan Presidential Office)
ペロシ米下院議長の台湾訪問への抗議として中国は台湾周辺で6日間の軍事演習を開始した。安全保障分野の専門家は、たとえ中国政府が本格的な衝突は望んでいなくても、情勢緊迫化のリスクが高まっていると指摘する。
中国国防省は2日夜、軍が厳戒態勢を取り「的を絞った演習」を開始すると発表した。
中国人民解放軍によると、海軍、空軍、ロケット軍、戦略支援軍、統合後方支援軍などが参加し台湾周辺の6カ所の空域および海域で合同演習を実施する。
アナリストによると、中国が巡航ミサイルや弾道ミサイルを台湾上空に直接発射したり、初めて封鎖を試みるかは不明。
香港の軍事評論家、宋中平氏は、演習は将来台湾と軍事的戦いをする場合への準備との見方を示した。
今回の演習が発表時、異例なことに地図が国営新華社通信を通じて示された。
これについて、中国の安全保障計画に詳しい台湾の高官は「台湾海峡を非国際水域とし、(中国が独自に設定した海洋上の軍事的防衛ラインである)第一列島線以西を勢力圏にしようとする野望がうかがわれる」と指摘。その通りになれば「地域諸国の安全と安定、地域経済にとって致命的」な影響を及ぼすと述べた。
一方、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のコリン・コー氏は、ペロシ氏の訪台で、中国は本格的な衝突は回避しつつ、毅然とした対抗措置を取るという難しい対応を迫られているとみる。ただ「中国が避けたいと考えていても偶発的エスカレーションの可能性はかなりある」という。
中国が公表した地図によると、今回の演習は1996年の「第三次台湾海峡危機」を上回る規模とみられる。
注目すべきは台湾の北方、東方、南方の演習場所が、台湾が主張する領海と交差していることだ。台湾当局は、演習が台湾領内に侵入しており、台湾の空域および海域を封鎖しているも同然だと非難し、国連規則に違反すると主張した。
コ-氏は、今回の訓練を中国軍の戦闘能力を知る機会だとして米軍や台湾軍が偵察機を飛ばして見守ると予想されるが、中国側が反応した場合は偶発的衝突のリスクを高めかねないと警告した。
