少女ら2人をレイプし殺害、全裸のまま崖に放置 ミャンマー国軍兵士の蛮行明らかに
民家へ放火、死者には高齢者や少女も
軍は事件のあったインバウンテン村を「PDFの地方拠点」とみなし、兵士200人を投入し8月11日から攻撃を開始。21日まで攻撃は続いたとしている。
関係者によると攻撃の数日前にチン州出身の抵抗勢力約70人のグループが同村を通過したことがあり、この情報が誤って軍に伝わり、反軍政の拠点と判断されて攻撃を受けた可能性もでている。
襲撃の結果多くの民家が放火されて焼失し、これまでに20人以上の殺害が確認されている。約7000人の住民が郊外に避難しているため死傷者の正確な数字はいまだに掌握できておらず不明としているが、死者の中には70歳から83歳までの高齢者3人、10代の少女、17歳の少年も含まれているとのことだ。
目撃者などによるとインバウンテン村を襲撃した兵士はTシャツにスポーツパンツという服装で、軍用ヘルメットと銃だけが兵士と認識できる姿だったという。
これは一般市民に対して軍の兵士を武装市民組織PDFのメンバーと混同させる目的があるのではないかとの見方もあり、姑息な軍のやり方といえる。
軍政は民家への放火を否定
軍政のトップミン・アウン・フライン国軍司令官は8月17日、ミャンマー全土で軍兵士による一般住民の民家への放火が行われているとの反軍政勢力の指摘に対して「兵士が民家に火を放つなどありえないことである」と否定した。国営メディアが20日に伝えた。
それによるとミン・アウン・フライン国軍司令官は17日に国連のミャンマー問題を担当するノエリーン・ヘイザー特使と会談した際に「特使がヤンゴン市内の視察、ネピドーまでの移動の車中からの様子でミャンマーがいかに平穏で安全であるか体感されたことと思う」としたうえで「国軍は市民の味方であり、市民が困っているときに兵士が民家に放火するなど絶対にありえない」と軍による放火作戦を完全に否定したのだった。
しかし会見の前後も各地で兵士による民家への放火、無抵抗で無実、非武装の一般市民の拘束、拷問、虐殺が各地で報告されるなど、ミン・アウン・フライン国軍司令官の発言が事実を反映していない、あるいは事実を見ようとしない姿勢が改めて浮き彫りとなっただけだった。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など