ベトナムと韓国の歴史問題「棚上げ」の思惑はなぜ一致したか?
LONG-BURIED WAR MEMORIES
「うちの子たちは韓国ドラマに夢中だ。国営テレビが韓国ドラマばかり流すからだ。子供たちは現代の韓国を絶賛するけれど、韓国がそんなに急成長を遂げることができたのは、ベトナム戦争に多くの兵士を派遣するのと引き換えに、アメリカから莫大なカネをもらったからだ。子供たちはそれを知らない」
「毎年、(ベトナム戦争で)アメリカに勝ったことを祝うたびに、オーストラリアやフィリピンや韓国とも戦った話をするようになった」と、ニャンは言う。「重要なことなのに、無視されてきたからだ」
フーイェン省の大学院生で、メディア学を専攻するロンは、オンラインから始まった『太陽の末裔』論争にとても驚いたという。「あのドラマが問題になるまで、自分の国の歴史を知らなかった」とロンは語る。「ベトナムは被害者なのだから、この問題について声を上げるべきだ」
だが、ベトナム政府も韓国政府も歴史的問題は棚上げにして、経済協力を優先したがっている。ベトナム語の外交関連出版物も、韓国と南ベトナム政府が密接な関係にあったことには言及していない。
韓国では、ベトナム戦争中の残虐行為は教科書に記載がなく、大韓民国歴史博物館や戦争記念館のベトナム戦争に関する常設展示でも触れていない。過去には韓国の参戦を称賛した大統領もいる。
今回、韓国、イギリス、アメリカ、カナダの7大学の韓国人の国際関係学者に、韓国政府がベトナム戦争について沈黙していることに関してコメントを求めたが、返答はなかった。
ベトナム戦争で韓国軍が犯した戦争犯罪が韓国のメディアで取り上げられるようになったのは、1990年代以降だ。アルバータ大学のビッキー・ソンヨン・クォン博士によると、韓国ではベトナム戦争の記憶について、今なお論争が続いている。
朴正煕政権時代は、ベトナムへの軍事介入をめぐる言説は、国民の根深い反共感情と表裏一体だった。ベトナムに参戦した韓国兵は、国家の繁栄に貢献し、共産主義の国際的な広がりを食い止めたと評価された。
2009年にはベトナム戦争の韓国人戦没者を追悼する法案が韓国国会で可決されたが、ベトナム政府はいつになく強く反発した。このような公式の見解に加えて、韓国の大衆文化はベトナム人を「非人道的な敵」として描いてきた。
市民団体や個人が過去の犯罪を償おうと積極的に活動しているにもかかわらず、ベトナムで行われた虐殺を韓国政府が公式に認めたり謝罪したりしたことはない。ODAを実施する政府機関の韓国国際協力団(KOICA)を通じて、かつて韓国軍が占領していた地方の学校や病院を支援しているが、過去の残虐行為に対する補償だとは明言していない。