対立するロシアとウクライナでも亡命希望者たちは協力、メキシコ経由で米国目指す
CBPは12月、18人のロシア人移民が2台の車で、サン・イーサイドロの通関手続地に突っ込んできたと発表した。この際、職員が発射した銃弾が1台に命中し、2台は互いに衝突。移民2人が頭部に軽傷を負ったと述べている。この日の発表では、同じ時にロシア国籍の8人が乗った別の車が1台、米国内に入ったという。
メキシコ経由で米国への入国に成功したと主張する移民らは、現在ロシア語のユーチューブ、あるいはセキュリティ保護の高い「テレグラム」といったアプリ上のプライベートグループチャットで、亡命希望者にノウハウを紹介している。
こうしたSNS上では、ルートの説明、車の調達を支援してくれる人物の連絡先や電話番号が共有されている。ロイターが確認したテレグラム内のロシア語グループでの最近のやりとりでは、チャットに参加したメンバーが、「支援者」は車を提供の代価として1人あたり少なくとも1500ドルを要求すると語っていた。別のメンバーは、ウクライナ国籍の母親のため、同乗できる車を見つけようとしていた。
通関手続地以外で国境を越えようとするロシア人、ウクライナ人もいる。1月22日早朝、米アリゾナ州ユマ付近で、双子の女の赤ん坊と男の子を連れた若いウクライナ人カップルが米国の国境管理官のもとに出頭し、亡命を求める様子をロイターのカメラマンが目撃している。
ワシントンの移民政策研究所に所属する専門家のジェシカ・ボルター氏は、米国における移民審査においてロシア人とウクライナ人の亡命申請が承認される比率が比較的高いと指摘。後に続く亡命希望者の関心を呼んでいるかもしれないという。
2022年度の政府のデータによれば、亡命を申請していたロシア人の約4分の3、ウクライナ人の半数が最終的に裁判所の審査で亡命を認められている。ただし米国の移民制度では申請が積み上がっているため、処理には数年かかる可能性がある。
メキシコ経由ルートが魅力的な理由は他にもある、とボルター氏は言う。米国の観光ビザの取得条件は厳格だが、ロシア人やウクライナ人が観光ビザで空路メキシコに入り、米国国境を目指すことは比較的容易なのだ。
メキシコのロペスオブラドール大統領は2月28日、同国はウクライナ難民の支援に注力するとし、「私たちが国境を閉じることはない」と述べた。
国内に留まるリスク、「大きすぎる」
ロシアの反体制派であるズバレフ氏は2017年、ナバルヌイ氏のウラジオストク市における選挙運動本部で副責任者を務めていたという。ズバレフ氏が欧州人権裁判所に提出した訴状によると、この年、同国の治安当局者がズバレフ氏のアパートの家宅捜索を行ったという。
ズバレフ氏はあるインタビューで、昨年、ナワリヌイ氏による活動がロシア政府に「過激派」と指定されたことで、「足がガクガク震えた。次の展開は分かっていた」と語った。「私自身に危険が及ぶリスクがあまりにも大きくなるのは時間の問題だった」
ズバレフ氏より先にメキシコ経由で米国に渡った仲間の活動家ら数人が、どのようなルートを使ったか教えてくれたという。同氏はメキシコ到着後、カンクンのホテルで数日間休養してから国境に赴き、米国への入国をめざす他のロシア人らと合流した。
ズバレフ氏は、車の入手経緯については語ろうとはしなかった。ただ、ティファナでロシア人相手に車の入手を手配している仲介業者からロイターが話を聞いたところ、「ロシア人は他国からの移民とは違う。(資金や援助者などの)リソースがある」という。
米国への亡命を希望したズバレフ氏は、15人ほどの他の移民とともに殺風景な国境施設の監房に53時間勾留された。
コネチカット州にたどりついたズバレフ氏は、昔取った杵柄(きねづか)である工学の知識を利用して光ファイバーケーブルを扱う事業を始め、亡命申請が承認されるのを待っているところだ。
(Dasha Afanasieva記者、Ted Hesson記者、Kristina Cooke記者、翻訳:エァクレーレン)
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