対立するロシアとウクライナでも亡命希望者たちは協力、メキシコ経由で米国目指す
ロシアの反体制派であるドミトリー・ズバレフ氏は、昨年その長旅を決行した。人権派弁護士であるズバレフ氏は、以前、大統領選挙に出馬した野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の選挙運動を支援した。ナワリヌイ氏は現在獄中にあり、彼の組織がロシア当局によって「過激派」と認定されたことを受け、反体制派に対する弾圧強化を恐れたズバレフ氏は国外に逃れた。
ズバレフ氏が語ったその足取りはこうだ。2021年6月にメキシコ・カンクン行きの航空機に乗ってモスクワを離れ、その後、米国国境のティファナへと飛ぶ。そこで他の移民11人と共にミニバンに乗り込んだ。米国との国境を越えた直後に亡命を求め、釈放されて亡命申請の手続きを進めている。現在コネチカット州で暮らすズバレフ氏は、多くのロシア人が後に続くだろうと予想している。
「抑圧はますます強まっており、戦争反対を叫ぶために街頭に出た人々はとても酷い扱いを受けている」とズバレフ氏は語った。「国内の悲惨な状況から逃れるため、難民という道を選ぼうとする人は増えるのではないか」
ズバレフ氏の件についてロシア政府にコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。
駐米ロシア大使館はメールによる声明の中で、サンディエゴ付近のメキシコ国境でロシア国籍と称する人々が「拘留」されていると表現。「非常に懸念を抱いている」として、被拘留者の身元を確認するために米国務省に連絡を取ったという。
同省にコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。
米国のバイデン大統領と政権高官らは、ウクライナ人だけでなく、街頭で侵攻への抗議活動を行ったロシア人についても強く支持すると述べている。
とはいえ、バイデン政権は今のところ、難民危機に関しては欧州に主役の座を譲っており、難民の大部分は欧州諸国を目指すと予想している。
米政権は3日、1日の時点で米国に滞在している数万人のウクライナ人を対象に、強制送還免除と就労を暫定的に認めたと発表した。
2日に開催された連邦議会での公聴会で、コレア下院議員(カリフォルニア州、民主党)は、ほぼ1カ月前にサンディエゴとティファナに挟まれた通関手続地サン・イーサイドロを訪問した際、車で到着するロシア人とウクライナ人の移民の数に驚いたと語った。
国境管理官は停止を命じられた20台の車をコレア議員に示し、どの車もウクライナ人とロシア人の移民でいっぱいだったと語ったという。
コレア下院議員は言った。「この問題は終わらないだろう」
亡命のノウハウ、SNSでシェア
パンデミック下で採用された「タイトル42」と呼ばれる政策により、米・メキシコ国境を越える移民の大半は、亡命申請の機会を与えられることなく速やかに退去させられる。
正規の歩道を使って通関手続地を徒歩で通過しようとする人々は、通常、米国の土を踏む前に追い返される。だが、車が停止を命じられるケースは、それよりも少ない。
そのため、メキシコで安い車を購入し、国境を越えて米国で亡命を申請しようとする移民が現れているという。かつて米国境警備隊主任を務めたロドニー・スコット氏は「国境線を一気に越えてしまおうという方法だ」と話す。