オミクロン後に起きること...本当にこれで「コロナ危機」は終わりなのか?

THE FOREVER VIRUS

2022年3月3日(木)17時11分
ネッド・ポッター、フレッド・グタール

220308P40_OMI_17.jpg

ロンドンのテムズ川沿いの記念壁に描かれた新型コロナの死者数を示すハートを塗り直すボランティア VUK VALCICーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES

変化しているのは人間も同じだ。2年前に新型コロナウイルスに生活を侵略されて以来、私たちは抵抗力を増した。CDCによれば、アメリカでは人口の63%がワクチン接種を完了し、感染経験者は恐らく抗体ができて一時的にせよウイルスから身を守ることができる。

「何らかの免疫を獲得した人の割合が高くなれば、実際そうなりつつあるが、新たな変異株が現れても問題は起きにくくなっていく」と、イーウォルドは言う。「免疫はもちろんだが、ウイルスは進化するにつれて弱毒化する傾向があるからだ」

さらにイーウォルドは「デルタ株とオミクロン株は、(20年初めに広がった)オリジナル株ほどの毒性はないようだ。私たちの予想どおりだ」と自信を示す。

ただし、全ての専門家が同じように考えているわけではない。新型コロナの病態については、まだオリジナル株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株など一握りの変異株のデータしかないと、アイゼンは警告する。しかもアルファ株から「支配的な変異株」の座を奪ったデルタ株は、アルファ株よりも毒性が強かった。

「進化につれて弱毒化」というのは間違い

「このウイルスは進化するにつれて弱毒化なんてしていない」と、アイゼンは言う。「たまたまオミクロンというクレイジーな変異株が、ワクチン接種者はさほど重症化させないらしい、というだけだ。1つ前の支配的な変異株(デルタ)は、その前の支配的な変異株(アルファなど)よりも、はるかに重症化させるものだった。たった1つのデータポイント(オミクロン株)をもって、これがトレンドだと結論付けるのは、科学的に正しい態度とは思えない」

新型コロナウイルスが、最終的には比較的無害なウイルスになるとしても、その進化には何年もかかる可能性がある。それまでの間は、どうにかワクチンでウイルスを管理する必要がある。そこで手掛かりになるのが、既存のコロナウイルスだ。

例えば、風邪や肺炎を引き起こすヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)は、数年置きに免疫システムを擦り抜ける能力を獲得する傾向があることが明らかになっている。オミクロン株もワクチン接種者や感染済みの人への感染が報告されているから、229Eと同じプロセスをたどっていると考えるのは合理的だ。

ただ、新型コロナウイルスがエンデミックウイルスになったとしても、アウトブレイク(感染症の爆発的拡大)と無縁になるわけではない。インフルエンザウイルスや既存のコロナウイルスも、世界的に大流行する年がある。問題は、こうしたアウトブレイクがどのくらい厄介なものになり、それをどう管理するかだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中