オミクロン後に起きること...本当にこれで「コロナ危機」は終わりなのか?
THE FOREVER VIRUS
だが、オミクロンで十分な数の人々が免疫を獲得して新たな変異株の出現を抑える、という主張を裏付ける確かなデータはないと、カリフォルニア大学デービス校のアイゼンは言う。「そういう主張を至る所で目にする。しかし、そういう主張は大部分、データではなく希望に基づいている」
大筋で一致しているのは、新型コロナウイルスは最終的には定着して局地的流行を繰り返す「エンデミック(風土病)」になるということだ。つまり、いくらか鳴りを潜め、時々急に勢いづいて、たまにパンデミックのレベルに達し、場合によってはワクチン接種が必要になる可能性はある。だが総じて、HIVやインフルエンザ、RSウイルス(普通は感染しても風邪程度で済むが、乳幼児や高齢者には危険)など、既に私たちが共存している多くの感染症に近いものになるだろう。
「かなり確実に言えるのは、新型コロナウイルスはなくならないということだ」と、カイザー家族財団のグローバルヘルス政策担当アソシエートディレクター、ジョシュ・ミショーは言う。「ウイルスは永遠に去らないかもしれないが、危機が永遠に去らないとは思わない」
危機は去るというのは主に他の感染症の歴史からの予測であって、新型コロナウイルスが私たちの未来にどう影響するかは謎だ。「これは新型のコロナウイルスだという点が見落とされている」と、ミシガン大学の感染症研究者で医師のプレティ・マラニは言う。「誰も経験したことのない状況だ」
一般的には時間とともに毒性が弱まる
世間一般の考えでは、ウイルスは時間がたつにつれて毒性が弱まる。例えば、流行を繰り返している季節性の風邪のウイルスは、新型コロナに比べれば症状は軽い。これらのウイルスは昔からあるので、起源についてはほとんど分かっていない。それでも一部の専門家は、新型コロナウイルスはいずれ毒性の弱いエンデミックウイルスになると考えている。
この見解によれば、ウイルスは進化上の生存戦略として宿主への害が少ないほど有利だ。宿主が重症化したり死んだりすれば、ウイルスは広がることができず死滅する。生き残るのは感染しやすい変異株で、重症化しにくく致死性の低いものが有利になる。やがて自然選択が致命的なウイルスの毒性を弱める。いわゆる「弱毒化」だ。
新型コロナウイルスはこれに当たると、ルイビル大学の生物学者ポール・イーウォルドは言う。WHOによれば、20年のオリジナル株などに比べて最新のオミクロン株の感染力は3倍だが致死性は低いという。20年前半の死亡率が約6%だったのに対し、最近の全米の死亡率は1.3%近くに低下。新薬が開発され、病院側の対応も向上して、より有効な治療ができるようになったのは確かだが、ウイルスも変化している。