オミクロン後に起きること...本当にこれで「コロナ危機」は終わりなのか?

THE FOREVER VIRUS

2022年3月3日(木)17時11分
ネッド・ポッター、フレッド・グタール

220308P40_OMI_14.jpg

ジンバブエでは商業施設でワクチンを接種 TAFADZWA UFUMELI/GETTY IMAGES

だが、オミクロンで十分な数の人々が免疫を獲得して新たな変異株の出現を抑える、という主張を裏付ける確かなデータはないと、カリフォルニア大学デービス校のアイゼンは言う。「そういう主張を至る所で目にする。しかし、そういう主張は大部分、データではなく希望に基づいている」

大筋で一致しているのは、新型コロナウイルスは最終的には定着して局地的流行を繰り返す「エンデミック(風土病)」になるということだ。つまり、いくらか鳴りを潜め、時々急に勢いづいて、たまにパンデミックのレベルに達し、場合によってはワクチン接種が必要になる可能性はある。だが総じて、HIVやインフルエンザ、RSウイルス(普通は感染しても風邪程度で済むが、乳幼児や高齢者には危険)など、既に私たちが共存している多くの感染症に近いものになるだろう。

「かなり確実に言えるのは、新型コロナウイルスはなくならないということだ」と、カイザー家族財団のグローバルヘルス政策担当アソシエートディレクター、ジョシュ・ミショーは言う。「ウイルスは永遠に去らないかもしれないが、危機が永遠に去らないとは思わない」

危機は去るというのは主に他の感染症の歴史からの予測であって、新型コロナウイルスが私たちの未来にどう影響するかは謎だ。「これは新型のコロナウイルスだという点が見落とされている」と、ミシガン大学の感染症研究者で医師のプレティ・マラニは言う。「誰も経験したことのない状況だ」

一般的には時間とともに毒性が弱まる

世間一般の考えでは、ウイルスは時間がたつにつれて毒性が弱まる。例えば、流行を繰り返している季節性の風邪のウイルスは、新型コロナに比べれば症状は軽い。これらのウイルスは昔からあるので、起源についてはほとんど分かっていない。それでも一部の専門家は、新型コロナウイルスはいずれ毒性の弱いエンデミックウイルスになると考えている。

この見解によれば、ウイルスは進化上の生存戦略として宿主への害が少ないほど有利だ。宿主が重症化したり死んだりすれば、ウイルスは広がることができず死滅する。生き残るのは感染しやすい変異株で、重症化しにくく致死性の低いものが有利になる。やがて自然選択が致命的なウイルスの毒性を弱める。いわゆる「弱毒化」だ。

新型コロナウイルスはこれに当たると、ルイビル大学の生物学者ポール・イーウォルドは言う。WHOによれば、20年のオリジナル株などに比べて最新のオミクロン株の感染力は3倍だが致死性は低いという。20年前半の死亡率が約6%だったのに対し、最近の全米の死亡率は1.3%近くに低下。新薬が開発され、病院側の対応も向上して、より有効な治療ができるようになったのは確かだが、ウイルスも変化している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中