人権問題で発言するか沈黙するか──北京五輪選手に迫られる二択
Activists Ask Olympins to Protest at 'Genocide Games,' Despite China Warning
ウイグル人に対する中国の人権侵害と北京冬季五輪に抗議するアムネスティー・インターナショナルの活動家たち(1月26日、パリ)Gonzalo Fuentes-REUTERS
<中国政府によるウイグル族迫害に国際的な非難の声が高まるなか、北京冬季五輪に出場する選手たちは、中国当局に脅され、人権団体には抗議を求められる困難な立場に置かれている>
中国政府当局は、オリンピックの精神や中国の規則に違反する発言をしないよう外国選手に警告を発しているが、一部の人権団体は北京冬季五輪を「ジェノサイド・ゲーム(大虐殺大会)」と呼び、選手たちに人権侵害に反対する声をあげるよう促している。
AP通信によると、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチはオンライン記者会見で、2月4日に始まる2022年冬季オリンピック大会を開催する中国に対して反対を表明した。「2022年冬季オリンピックはジェノサイド・ゲームとして記憶されるだろう」と、中国の元人権活動家でシカゴ大学客員教授の滕彪(トン・ビャオ)は語った。
北京冬季五輪を完全にボイコットすることはできなかったが、人権活動家は抗議を続けている。「私は個人的に、五輪参加選手たちはその立場と特権をこの歴史的機会に利用する必要があると信じている。ジェノサイドに抗議してほしい」と、チベット行動協会のツェワン・ラドンは言う。
アメリカなどいくつかの国は、ウイグル族や他のイスラム教徒の少数民族に対する中国の残虐行為を理由に、北京冬季五輪の外交的ボイコットを発表した。
独立民衆法廷「ウイグル法廷」は昨年12月、中国がウイグル族に対してジェノサイドの罪を犯していると認定した。本誌は以前、中国当局がウイグル族に不妊手術と避妊を強制しているだけでなく、強姦、拷問、収容所への強制収容などの犯罪を行っていることを示す文書について報じた。
曖昧すぎる処罰の基準
ロイターは以前、五輪に参加する選手たちがオリンピック憲章第50条に違反するなと警告されていることを報じた。この条項は「オリンピックの会場では、いかなるデモンストレーションも、政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない」としている。
冬季オリンピック北京2022の国際関係部のヤン・シュー副事務局長は、オリンピック精神と中国の法律に違反する行動をとった選手は、処罰の対象になると述べた。
五輪2大会に出場経験のあるアメリカのクロスカントリースキー選手ノア・ホフマンはCNNスポーツに対し、冬季オリンピック中に選手が人権問題に抗議の声をあげた場合、その身に危険が及ぶのではないかという懸念を明かした。
「中国の組織員会は選手が中国の法律に違反したら処罰すると警告している」と、ホフマンは語った。「中国の法律は、言論に関しては、非常に不透明だ。どのような言論が違法とみなされるか、まったくわからない」
ホフマンは、11月に中国政府高官から性的関係を強要されたことをSNSで訴えた女子プロテニス選手・彭帥(ポン・シュアイ)の例もあげた。彭の投稿は30分後に削除され、彼女は後に告白の内容を否定した。