最新記事

北京五輪

人権問題で発言するか沈黙するか──北京五輪選手に迫られる二択

Activists Ask Olympins to Protest at 'Genocide Games,' Despite China Warning

2022年1月31日(月)16時11分
シャーロッテ・トラットナー
北京五輪に抗議する人権団体

ウイグル人に対する中国の人権侵害と北京冬季五輪に抗議するアムネスティー・インターナショナルの活動家たち(1月26日、パリ)Gonzalo Fuentes-REUTERS

<中国政府によるウイグル族迫害に国際的な非難の声が高まるなか、北京冬季五輪に出場する選手たちは、中国当局に脅され、人権団体には抗議を求められる困難な立場に置かれている>

中国政府当局は、オリンピックの精神や中国の規則に違反する発言をしないよう外国選手に警告を発しているが、一部の人権団体は北京冬季五輪を「ジェノサイド・ゲーム(大虐殺大会)」と呼び、選手たちに人権侵害に反対する声をあげるよう促している。

AP通信によると、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチはオンライン記者会見で、2月4日に始まる2022年冬季オリンピック大会を開催する中国に対して反対を表明した。「2022年冬季オリンピックはジェノサイド・ゲームとして記憶されるだろう」と、中国の元人権活動家でシカゴ大学客員教授の滕彪(トン・ビャオ)は語った。

北京冬季五輪を完全にボイコットすることはできなかったが、人権活動家は抗議を続けている。「私は個人的に、五輪参加選手たちはその立場と特権をこの歴史的機会に利用する必要があると信じている。ジェノサイドに抗議してほしい」と、チベット行動協会のツェワン・ラドンは言う。

アメリカなどいくつかの国は、ウイグル族や他のイスラム教徒の少数民族に対する中国の残虐行為を理由に、北京冬季五輪の外交的ボイコットを発表した。

独立民衆法廷「ウイグル法廷」は昨年12月、中国がウイグル族に対してジェノサイドの罪を犯していると認定した。本誌は以前、中国当局がウイグル族に不妊手術と避妊を強制しているだけでなく、強姦、拷問、収容所への強制収容などの犯罪を行っていることを示す文書について報じた。

曖昧すぎる処罰の基準

ロイターは以前、五輪に参加する選手たちがオリンピック憲章第50条に違反するなと警告されていることを報じた。この条項は「オリンピックの会場では、いかなるデモンストレーションも、政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない」としている。

冬季オリンピック北京2022の国際関係部のヤン・シュー副事務局長は、オリンピック精神と中国の法律に違反する行動をとった選手は、処罰の対象になると述べた。

五輪2大会に出場経験のあるアメリカのクロスカントリースキー選手ノア・ホフマンはCNNスポーツに対し、冬季オリンピック中に選手が人権問題に抗議の声をあげた場合、その身に危険が及ぶのではないかという懸念を明かした。

「中国の組織員会は選手が中国の法律に違反したら処罰すると警告している」と、ホフマンは語った。「中国の法律は、言論に関しては、非常に不透明だ。どのような言論が違法とみなされるか、まったくわからない」

ホフマンは、11月に中国政府高官から性的関係を強要されたことをSNSで訴えた女子プロテニス選手・彭帥(ポン・シュアイ)の例もあげた。彭の投稿は30分後に削除され、彼女は後に告白の内容を否定した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英仏・ウクライナの軍トップ、数日内に会合へ=英報道

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ反発、大幅安から切

ビジネス

米利下げ時期「物価動向次第」、関税の影響懸念=リッ

ワールド

再送-日鉄副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中