最新記事

櫻井翔と戦争の記憶

若者はこうして戦地へ送られた──櫻井翔が日本近代史家・秦郁彦に聞く

YOUTH AT WAR

2021年12月21日(火)18時55分
ニューズウィーク日本版編集部

 学生のほうも圧倒的にパイロットに人気が集まったのですが、一人前になるまでには1年の訓練が必要なのに、技量不足のまま44年夏から秋に前線へ送り出されました。そして結果的に特攻要員とされてしまった。学生のほうも、通常の航空戦では役に立ちそうもないが、体当たりならという心理状態に追い込まれ、特攻志願者が続出します。43年9月に採用された海軍飛行科予備学生は1618人が戦死したが、うち448人が特攻死でした。

櫻井 アメリカの学生パイロットはどんな役割を果たしたのですか。

 志願者の中で人気が高かったのはやはりパイロットで、優秀者に十分な訓練を施し、彼らは航空戦の勝利を決定した中核の戦力となりました。パイロットは全員が将校になりました。例えば後に大統領になるジョージ・ブッシュ(父)は高校を出てすぐ海軍のパイロットを志望、1年後に最年少パイロットとして18歳で少尉になり、小笠原上空で撃墜され味方の潜水艦に拾われました。また米空軍の戦闘機パイロットで5機以上を撃墜したエースのトップから第30位までは全員が大学出身者だったのに対し、日本はゼロという具合で、1年遅れの影響が出ました。

櫻井 私の大伯父である櫻井次男は、商工省に入ると同時に「短現」で海軍に入隊しました。海軍に行かないで、そのまま商工省で働くという選択肢はなかったのでしょうか。(編集部注:次男氏は42年9月に東京帝国大学法学部を卒業、高等文官試験に合格して、商工省に入省すると同時に「短期現役」、いわゆる「短現」で海軍経理学校に入校。主計中尉に任官して海防隊の主計長として勤務し、終戦の年の3月、ベトナム東岸沖で乗艦が米空軍機に撃沈され、戦死した)

 そのまま商工省に勤務していると、徴兵され陸軍の二等兵として第一線に送られる可能性がありました。海軍はそこに目を付けて高等文官試験に合格した若手官僚を採用し、急膨張した軍艦や部隊の主計科士官に充当しました。経理、補給、輸送や、軍需工場の監督官に振り分けました。

短現は38年卒業の第1期生から45年卒業までの累計は3381人で、うち388人が戦死・戦病死していますが(『短現の研究』市岡揚一郎、87年)海軍将校の生活水準は陸軍に比べると格段に良かったので、各省に採用されたキャリア官僚は短現を選んだ人が多かったようです。戦後に各省事務次官の半分近くが短現出身者だったことが話題になりました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、EU議員団の8年ぶり訪中を歓迎 関係安定化に

ワールド

イスラエル、レバノン南部に緩衝地帯設置へ 国防相表

ワールド

ゴールドマン、26年末の金価格予想を5400ドルに

ワールド

独失業率、3月は6.3%で横ばい 失業者数も変わら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 5
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中