最新記事

櫻井翔と戦争の記憶

若者はこうして戦地へ送られた──櫻井翔が日本近代史家・秦郁彦に聞く

YOUTH AT WAR

2021年12月21日(火)18時55分
ニューズウィーク日本版編集部
出陣学徒壮行会

雨の降る壮行会で行進する大学生たち(1943年10月21日、明治神宮外苑競技場) Public Domain

<本誌12/21号『櫻井翔と戦争の記憶・後編』掲載のインタビューを公開。1943年「学徒出陣」とは何だったのか。なぜアメリカの学生たちは自発的に入隊し、日本の学生たちは志願をためらったのか>

太平洋戦争の激化に伴い、日本では大学や高等専門学校などに在学する学生などが学徒出陣として陸海軍に入隊した。その数は10万人余りとも言われる。背景にはどんな事情があったのか。櫻井翔が日本近代史家の秦郁彦に聞いた。

◇ ◇ ◇

櫻井 1943年(昭和18年)10月21日、小雨降る東京・明治神宮外苑競技場(現・国立競技場)において大学生たちが行進する情景は、今でもテレビでよく報じられます。いわゆる「学徒出陣」ですが、その背景事情を教えてください。

nw211214cover.jpg 少なからぬ出陣学徒が戦場で倒れ帰らなかったこともあり悲壮感と共に語られますが、小・中学校を卒業して未成年で従軍した人たちの中には、大学生だけが特別視されることに違和感を持つ人もいるようです。

制度的には在学中の大学生は卒業時まで徴兵猶予の特典を与えられていたのですが、戦局の悪化でそれを停止しました。日本国民は満20歳(44年から19歳へ引き下げ)になると徴兵検査を受け、兵役に服する義務がありましたが、学徒出陣の学生たちは43年10月に徴兵検査を受け、12月に陸海軍へ入隊しました。

櫻井 アメリカにも学徒出陣のようなものはあったのですか。

 41年12月、日本の真珠湾攻撃で日米が開戦すると、多くの学生たちはこぞって自発的に軍を志願し、続々と入隊しました。私の友人で米コロンビア大学の学生だった人から聞いたのですが、大学のキャンパスは空っぽになったそうです。友人は志願せずバスに乗っていると、見知らぬ女性が「あの人、どこか体が悪いのかしら」と聞こえよがしにしゃべっているので、いたたまれず軍に志願したそうです。一種の社会的圧力ですが、彼らは1年間の訓練を終えると、43年にどっと前線へ投入されました。

アメリカの主要大学には学内に予備将校候補者を育成するROTC(Reserve Officersʼ Training Corps)制度が行き渡っていて、入隊すると即戦力になりました。イギリスも似たような状況でしたが、日本の場合は学徒出陣で強制的に動員されるまで志願者は極めて少数でした。こうした格差は意外に深刻な影響をもたらします。

櫻井 なぜ日本の学生は志願をためらったのでしょうか。

 さまざまな理由があります。まずアメリカの「民主主義防衛」のように学生を感奮させる大義名分が乏しかったことです。次に、しごきといじめの兵営生活の悪評が学生に嫌悪感を与えたこと。さらに、マルクス主義の影響もあって軍に対する反感が強かったことなどですが、軍のほうにも惰弱な学生は役に立ちそうもないという不信感があって、動員が遅れたのです。日米開戦からしばらくは、日本軍は連戦連勝を重ねたので切迫感がなかったのも一因です。

櫻井 出陣した学生はパイロットとして期待されていたようですね。

 そうです。航空戦での勝利が戦局を左右すると認識されていましたので、パイロットの急速な大量養成が必要とされました。海軍に飛行科予備学生、陸軍には特別操縦見習士官制をつくり、訓練が終わると直ちに将校(少尉)に任官させる特典を用意しました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米イラン停戦協議への思惑

ワールド

イラン、米国と合意したLNGタンカーの海峡通過認め

ワールド

米最高裁、トランプ氏盟友バノン氏の有罪判決破棄 公

ビジネス

中東戦争でインフレ加速・成長鈍化の恐れ、世界成長の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中