最新記事

中国人拉致

<コンゴ鉱山事件>なぜ海外で中国人労働者の拉致が多発するのか

China Tells Citizens to Leave Part of Congo After Kidnappings

2021年12月2日(木)17時54分
ローラ・コーパー
コンゴの鉱山労働者

北キブ州の鉱山ではレアメタルを含む鉱石コルタンの採掘が進む Goran Tomasevic-REUTERS

<鉱物資源の支配権をめぐって複数の武装勢力がしのぎを削っているような場所にも危険も顧みずに出て行く結果>

コンゴ民主共和国東部で中国人が襲撃され拉致された事件を受け、中国政府は12月1日、コンゴ東部3州から退避するよう自国民に指示した。

コンゴ民主共和国にはコバルトなどレアメタルが豊富にあり、中国企業が盛んに開発を進めている。首都キンシャサの中国大使館は、武装勢力が居座る東部の南キブ、北キブ、イトゥリ州で、過去1カ月間に複数の中国人が襲撃され拉致されたとして、海外版WeChat(ウィーチャット)を通じてコンゴで操業する中国企業と労働者に警告を発したと、AP通信が伝えた。

襲撃の詳細は明らかにされていないが、AP通信によると、中国大使館は南キブ州の鉱山で中国人5人が拉致されたと述べている。

WeChatの投稿で、中国大使館は「コンゴ民主共和国在住の全ての中国人及び中国資本の企業」に対し、「地元の状況を慎重に注視し、安全意識を高めて緊急事態に備え、他地域への不要不急の旅行を避ける」よう求めている。

大使館はまた、東部3州の在住者には12月10日までに緊急連絡先などを大使館に知らせ、比較的安全な地域への避難を検討するよう呼びかけた。特にイトゥリ州のブニア、ドジュグ、北キブ州のベニ、ルチュル、南キブ州のフィジ、ウビラ、ムウェンガ在住者は直ちに退避するよう命じ、これに従わない者は「その結果について自分で責任を取る」ようクギを刺している。

王毅外相が対処を求める

以下はAP通信が伝えた詳細。

コンゴ共和国東部では、「ルワンダ解放民主軍」、「マイマイ」、「3月23日運動(M23)」
など、複数の武装勢力が鉱物資源の利権をめぐり、しのぎを削っている。

レアメタルなどの鉱物資源は武装勢力の資金源となるため、鉱山開発を行えば、武装勢力に狙われるのは目に見えている。だが中国企業は危険をいとわずコンゴ民主共和国をはじめアフリカ諸国に労働者を送り込み、精力的に採掘を進めてきた。パキスタンなどアフリカ以外の国々でも、中国人労働者が武装勢力に拉致される事件は多発している。

新華社通信によれば、中国の王毅(ワン・イー)外相は11月29日、セネガルの首都ダカールで、コンゴ民主共和国のクリストファー・ルトゥンドゥラ外相とこの問題について協議した。

中国政府と中国共産党は「国外の中国企業と中国人の安全確保を非常に重視しており、コンゴ民主共和国において中国人を誘拐し殺傷する重大犯罪がこのところ多発していることを極めて憂慮している」と、王は述べ、拉致被害者の解放と「2国間協力の基盤となる安全安心な環境」の担保を、ルトゥンドゥラに求めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ

ワールド

トランプ氏、北朝鮮の金総書記と「コミュニケーション

ビジネス

現代自、米ディーラーに値上げの可能性を通告 トラン

ビジネス

FRB当局者、金利巡り慎重姿勢 関税措置で物価上振
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中