最新記事

米企業

737MAX墜落事故の犠牲者家族に、ボーイング幹部が言い放った心ない言葉

REMEMBER THE MAX CRASH

2021年12月1日(水)16時54分
ピーター・ロビソン(ジャーナリスト)

211207P52_BIG_03v2.jpg

ボーイングのカルフーンCEO CHRISTOPHER GOODNEY-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

いざ着席すると、ファインバーグは遺族会をまとめるためのマイケルらの努力を褒めそやした。ちなみにサミヤの母ナディアは著名な消費者運動家ラルフ・ネーダーの姪で、大企業と渡り合うネーダーの姿勢を受け継いでいた。だから遺族たちを政治家に引き合わせ、議会に公聴会を開かせ、ボーイングの経営陣を質問攻めにしてもいた。

ファインバーグは、義援金の分配方法について夫妻の考えを聞きたいと言った。夫妻は既に、ボーイングのキーティングに会って遺族会への支援を要請していた。キーティングからは予算の提示を求められた。ファインバーグとマイケルも、話し合いの継続で同意した。

2月14日、ストゥーモ夫妻はファインバーグのオフィスで再び話し合った。ファインバーグは9.11テロの犠牲者補償基金の管理者として名を上げ、これまでにBPやフォルクスワーゲン、カトリック教会などが関わる補償問題も手掛けていた。

夫妻が遺族会に関する以前のキーティングとの会話を持ち出すと、ファインバーグは自分の仕事はボーイングから完全に独立しているし、地域社会や非営利団体への資金ではなく、遺族に当座の支援金を分配することだと語った。それでも、夫妻の取り組みは非常に重要なので、夫妻が資金を獲得できるよう、ボーイングに訴えると申し出た。

数日後の2月17日、ボーイングはプレスリリースで、ファインバーグの役割が拡大され、遺族に約束していた義援金の半分だけでなく、1億ドル全体の分配を担当すると発表した。

しかし、同じ月に遺族会が請求した40万ドルの予算を拒否したのは、ファインバーグではなくキーティングだった。実はほかにも「多くのグループ」と接触があり、この遺族会が遺族の過半数を代表しているとの確信を持てないと語った。

「言い逃れに聞こえた」と、キーティングやファインバーグとの交渉に同席したある人物は言う。「彼らには最初から、こちらの提案を受け入れるつもりがなかった」

新CEOからも心ない発言が

追悼行事の直前には、ボーイングの新CEOに就任したデービッド・カルフーンがニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに応じていたが、その発言がまた遺族たちの神経を逆なでした。カルフーンの発言からは、この巨大企業が事故の教訓を真に学んではいないことがうかがわれた。

例えば、カルフーンはインドネシアとエチオピアのパイロットが「アメリカのパイロットほど熟練していない」ことも問題だったとほのめかした。アメリカのパイロットならソフトウエアの誤動作に対処できると思うのかという質問に、カルフーンは発言をオフレコにすることを求めた。記者がそれを拒否すると「じゃあ無理だ」と言った。「答えは推測できるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中