737MAX墜落事故の犠牲者家族に、ボーイング幹部が言い放った心ない言葉
REMEMBER THE MAX CRASH
いざ着席すると、ファインバーグは遺族会をまとめるためのマイケルらの努力を褒めそやした。ちなみにサミヤの母ナディアは著名な消費者運動家ラルフ・ネーダーの姪で、大企業と渡り合うネーダーの姿勢を受け継いでいた。だから遺族たちを政治家に引き合わせ、議会に公聴会を開かせ、ボーイングの経営陣を質問攻めにしてもいた。
ファインバーグは、義援金の分配方法について夫妻の考えを聞きたいと言った。夫妻は既に、ボーイングのキーティングに会って遺族会への支援を要請していた。キーティングからは予算の提示を求められた。ファインバーグとマイケルも、話し合いの継続で同意した。
2月14日、ストゥーモ夫妻はファインバーグのオフィスで再び話し合った。ファインバーグは9.11テロの犠牲者補償基金の管理者として名を上げ、これまでにBPやフォルクスワーゲン、カトリック教会などが関わる補償問題も手掛けていた。
夫妻が遺族会に関する以前のキーティングとの会話を持ち出すと、ファインバーグは自分の仕事はボーイングから完全に独立しているし、地域社会や非営利団体への資金ではなく、遺族に当座の支援金を分配することだと語った。それでも、夫妻の取り組みは非常に重要なので、夫妻が資金を獲得できるよう、ボーイングに訴えると申し出た。
数日後の2月17日、ボーイングはプレスリリースで、ファインバーグの役割が拡大され、遺族に約束していた義援金の半分だけでなく、1億ドル全体の分配を担当すると発表した。
しかし、同じ月に遺族会が請求した40万ドルの予算を拒否したのは、ファインバーグではなくキーティングだった。実はほかにも「多くのグループ」と接触があり、この遺族会が遺族の過半数を代表しているとの確信を持てないと語った。
「言い逃れに聞こえた」と、キーティングやファインバーグとの交渉に同席したある人物は言う。「彼らには最初から、こちらの提案を受け入れるつもりがなかった」
新CEOからも心ない発言が
追悼行事の直前には、ボーイングの新CEOに就任したデービッド・カルフーンがニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに応じていたが、その発言がまた遺族たちの神経を逆なでした。カルフーンの発言からは、この巨大企業が事故の教訓を真に学んではいないことがうかがわれた。
例えば、カルフーンはインドネシアとエチオピアのパイロットが「アメリカのパイロットほど熟練していない」ことも問題だったとほのめかした。アメリカのパイロットならソフトウエアの誤動作に対処できると思うのかという質問に、カルフーンは発言をオフレコにすることを求めた。記者がそれを拒否すると「じゃあ無理だ」と言った。「答えは推測できるだろう」