737MAX墜落事故の犠牲者家族に、ボーイング幹部が言い放った心ない言葉
REMEMBER THE MAX CRASH
事故後にボーイングは遺族と地域社会を支えるために1億ドルを支払うと発表していたが、まるで社内の福利厚生費を管理するかのように、その使途に制限を設け始めていた。その場にいたある人物の見立てでは、「カトリック信者の彼には人の死を嘆き悲しむ気持ちがあるが、企業人としての使命は別。最低限のコスト、最小限のメディア露出。それが彼に課された使命だった」。
行事は全て会社側が取り仕切る
行事を仕切るのは会社であり、遺族ではない。何を聞かれてもキーティングの答えは同じだった。セラピストを同伴したいと言えば、会社側で用意したセラピストたちを待機させると答える。出席できない遺族のためにカメラマンを入れたいと言えば、会社が撮影班を手配していると答える。もちろん、ジャーナリストの同席は論外だった。
式次第の打ち合わせになると、とげのある発言が続出した。追悼の辞を読む際は、ボーイングの関係者は退席してほしいとの希望を複数の遺族が述べた。葬儀の場に殺害犯がいるように感じられるからだ。するとキーティングは、こう答えた。「こちらが費用を負担する以上、私たちも同席します」
ボーイングが約束した1億ドルの義援金についても交渉はこじれた。犠牲者の1人でアメリカ人のサミヤ・ストゥーモ(当時24歳)は、女性のための医療支援でケニアに向かう途中だった。娘の無念を思い、父マイケルは非営利の「302便遺族会」を立ち上げた。
そして1月30日、義援金分配のためにボーイングに雇われた有名弁護士ケネス・ファインバーグと会うことになった。場所は首都ワシントンの高級ホテル。まずは昼食を共にして打ち解けましょう、という趣向だ。マイケルとしては、義援金の分配基準を知り、遺族会にも少し回してほしいと願っていた。
しかし、初対面にしては気まずい展開になった。エレベーターへと歩きながら、マイケルはファインバーグに言った。うちの娘、実は17年に出身校マサチューセッツ大学の同窓会であなたに会ったことがあるんですよ。するとファインバーグは、「その時のスピーチなら覚えています。彼女、今はどうしています?」と反射的に返してきた。「アディスアベバの地に眠っている」と、マイケルは吐き捨てるように答えた。
それでもファインバーグは何も気付かないようだった。ストゥーモ家について何も下調べをしていないのは明らかだった。