キャセイ航空パイロットが苦しむ、年最大150日の隔離生活 日光ない「独房」も
「公平でないですし、正当化されるものでもないと思います」「まったくもって受け入れられません」とパイロットは憤る。空港を去ったあとは、たとえ低リスク国からの帰国であっても、到着から3日間の自宅待機が義務付けられる。1日の外出時間は2時間までだ。続く18日間も、必要のない他者との接触を避けなければならない。
こうした制限に対し、有給休暇などの補償はまったくない。初回の入国時や続く機会にはまだ我慢できても、パンデミック以来幾度も繰り返すことでストレスが高まっているケースが多いという。
まるで独房、運動機会は刑務所以下
また、一部のケースでは隔離施設送りとなり、生活環境はさらに悪化する。パイロット自身から陽性反応が検出された場合、または他の陽性者の濃厚接触者と判断された場合には、香港・ランタオ島のペニーズベイに設けられた悪名高い隔離センターへ移送される。
この地にはプレハブ2階建ての仮設住宅が一面に広がり、ベッドのほかにはわずかな空間しかない閉ざされた一室で、人々は3週間の孤独な隔離生活を強いられる。
隔離を経験したあるパイロットはBBCに対し、狭い部屋での「独房監禁」のようなものであり、「日光はいっさいなかった」と振り返る。「植物さえも、葉の一枚たりとも、見ることはありませんでした。」
別のパイロットはCNNに対し、隔離施設での生活は「非人道的」であると述べた。刑務所でさえ1日1時間ほど屋外で体を動かす時間を受刑者に与えているのに対し、隔離施設ではそれすら許されないと訴えている。
香港と距離を置く海外キャリア
パイロット自身のみならず、濃厚接触者と判断されればその家族や友人たちも隔離施設に送られることとなる。11月にはキャセイ社のパイロット3名が陽性反応を示し、その濃厚接触者となった270名が隔離キャンプへ送られた。
3名はドイツ・フランクフルトでのストップオーバーの際、規定に違反してホテルを抜け出していた。英ガーディアン紙によると、3名はすでに懲戒解雇されている。
香港における厳格なルールがクルーに悪影響を及ぼすとして、同地と距離を置くキャリアも出始めた。英ブリティッシュ・エアウェイズは11月下旬、従業員がこの「隔離キャンプ」送りとなった事態を受け、香港便の運行を停止している。英インディペンデント紙などが報じた。
また、米フェデックスは香港に存在した乗務員基地を完全に閉鎖した。スイス・インターナショナル・エアラインズも11月、香港便を停止している。
厳格な水際対策は、香港市民の安全を守るための措置ではある。しかし、航空業界従業員の生活を大きく制限するだけでなく、旅客・物流ハブとしての香港の立場を危うくするという予想外の影響を生じはじめた。オミクロンの出現を受け、先行きは不透明さを増すばかりだ。