バイデンはどうすれば「失敗大統領」にならずに済むか

UNDER PRESSURE

2021年12月18日(土)15時55分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

211221P20_BDN_02.jpg

サンダース(写真左)やエリザベス・ウォーレン上院議員などの党内左派とも折衝 TASOS KATOPODIS/GETTY IMAGES

1.75兆ドルに予算規模を縮小した大型歳出法案の枠組みを発表した前日の10月27日には、ホワイトハウスでサンダースと非公式に会談した。翌日に発表する内容への支持を取り付けるためだ。

党内の進歩派はこの1週間ほど前、法案の規模を3.5兆ドルから半分程度に縮小することを受け入れていた。

10月半ば以降、バイデンは議会のあらゆる重要人物と活発に話し合い、法案にどの要素を残すべきか協議を進めていた。

「落としどころを探すという困難な作業が始まった」と、サバトは言う。「懐柔と説得のために、できることは何でもやった」

進歩派はいくつかの難しい譲歩をしたと、ホワイトハウス関係者たちは言う。ジャヤパルとサンダースは10月半ば、幼児教育の無償化が引き続き盛り込まれることを条件に、コミュニティ・カレッジの無償化を見送ることを容認した。

予算規模を抑えてマンチンの賛同を取り付けるために、バイデンも野心的な有給家族休業制度の縮小を受け入れた。この政策は、大統領選で強く訴えた政策の1つだった。

マンチンの了解を得るには、気候変動対策でも妥協が必要だった。

ホワイトハウス関係者によると、この点でもバイデンが進歩派を説得した。石炭火力発電をクリーンエネルギーに転換した電力会社に補助金を支給し、転換を拒んだ電力会社に制裁を科す制度の導入を取りやめたのだ。

さまざまな考え方を持つ人たちに対してリーダーシップを振るい、結果を出す――こうした政治手法こそ、大統領選でバイデンが有権者に約束したものだと、大統領に近い人たちは言う。

「大統領選で約束した姿を再び有権者に見せられるだろう」と、民主党の世論調査専門家ジェフ・ホーウィットは述べている。

ビルド・バック・ベター法案に先立ち11月5日には、バイデン政権の内政上のもう1つの看板政策であるインフラ投資法案が議会を通過した。

予算総額は1兆ドル規模。このアメリカ史上最大規模のインフラ整備計画は、高速道路、橋、港湾の近代化や、地方への高速インターネット網の拡大などを目指す意欲的なものだ。

2つの重要法案をいずれも成立させられれば、政治環境は大きく様変わりすると、大半の民主党関係者は主張する。そもそも、ビルド・バック・ベター計画の個々の内容は世論調査で高い支持を得ている。

ピュー・リサーチセンターの最近の調査によれば、メディケアは54%の人が支持している。子育て世帯への税制優遇措置には55%、気候変動対策には53%が賛成だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=大幅安、雇用統計・エヌビディア決算を

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロ・円で上昇、経済指標の発

ワールド

トランプ氏、医療費削減に関する発表へ 数日から数週

ワールド

再送EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中