算数嫌いな人たちに共通する「苦手な単元」にこそ、数学の神髄があった
環: え? 僕何か間違えました?
ピ: そうやなくて、わしは、なんでやねん? と聞いたんや。なんでこの図を書いたんやと聞いとるんや。
環: 速さの問題は、だいたい図を描くとわかりやすくなりますよ。
ピ: だからそうやなくて、なんで自分は、迷わず家から駅までの12kmを図にしたのかと聞いとるねん。わしは、素直で賢い小学生の気持ちになって質問しとる。問題文には、「時速4km」とか「5時間」とか、他にも数字があるやないけ? なんで速さや時間じゃなくて、真っ先に道のりを図にしたんや?
環: この問題だと、速さや時間を図にしても解きにくいと思いますよ。
ピ: だから、なんで道のりを図にしたんや? なんでその理由を教えてやらん? 算数数学は論理的な学問やなかったのか?
環: うーん、そう言われればそうなんですけど、問題を解くパターンとして憶えてもらえれば......。
なんで肝心なところで論理から暗記に戻るんや? いいか、「速さ」の問題でまず道のりを図示するには、明確な理由がある。とても単純で重要な理由や。それは、速さ・時間・道のりのなかで、道のりがいちばん具体的やからなんや!
環: え、そんな単純な理由ですか?
ピ: そうや。ええか、速さっていうのは、抽象的な概念や。自分、速さを見たことはあるか?
環: ええと、自動車のスピードメーターでは見えますね。
ピ: その程度やろな。しかし、相手は車の運転をしたことがない小学生やで? 速さっていうのは、基本的に目に見えない、抽象的な概念や。新幹線に乗ると時速300kmで走る。新幹線の窓から外を見るとああ、速いなーと感じるやろう。けど一方、飛行機に乗ると時速900km以上でるのやけど、飛行機の窓から外を見ても、新幹線より3倍速いとは感じられんやろう。もちろん、わしの時代にはスピードメーターなんてなかったんやで。速さの概念はすでにあったけどな。
̶( やっぱりこのじいさん、紀元前の人間だという設定は崩さないんだ......)
ピ: あ? なんか言いたげやな?
環: いや! 大丈夫です! 続けてください!
ピ: 速さ、時間、道のりの三人組のうち、いちばん具体的なもの、目に見えやすいのは道のりや。時間は目に見えないけど、時間が長いとか短いとか言うやろ? そういう意味で、時間の抽象度は中くらいや。そして速さがいちばん抽象的になる。
問題を解くときは、単純に、具体的なものから図にすればいい。
まずは道のりや。これでほとんどの問題は解ける。それで上手くいかなかったら次点で時間。小学校レベルやとこれでじゅうぶんやろ。速さを図示して解きやすくなる問題は、小学校レベルだとほとんどないんやないか。算数も数学も、実は頭で考える必要はあまりない。図にして、目で考えればいいんや。