最新記事

数学

算数嫌いな人たちに共通する「苦手な単元」にこそ、数学の神髄があった

2021年11月17日(水)18時36分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

環: え? 僕何か間違えました?

ピ: そうやなくて、わしは、なんでやねん? と聞いたんや。なんでこの図を書いたんやと聞いとるんや。

環: 速さの問題は、だいたい図を描くとわかりやすくなりますよ。

ピ: だからそうやなくて、なんで自分は、迷わず家から駅までの12kmを図にしたのかと聞いとるねん。わしは、素直で賢い小学生の気持ちになって質問しとる。問題文には、「時速4km」とか「5時間」とか、他にも数字があるやないけ? なんで速さや時間じゃなくて、真っ先に道のりを図にしたんや?

環: この問題だと、速さや時間を図にしても解きにくいと思いますよ。

ピ: だから、なんで道のりを図にしたんや? なんでその理由を教えてやらん? 算数数学は論理的な学問やなかったのか?

環: うーん、そう言われればそうなんですけど、問題を解くパターンとして憶えてもらえれば......。

なんで肝心なところで論理から暗記に戻るんや? いいか、「速さ」の問題でまず道のりを図示するには、明確な理由がある。とても単純で重要な理由や。それは、速さ・時間・道のりのなかで、道のりがいちばん具体的やからなんや!

環: え、そんな単純な理由ですか?

ピ: そうや。ええか、速さっていうのは、抽象的な概念や。自分、速さを見たことはあるか?

環: ええと、自動車のスピードメーターでは見えますね。

ピ: その程度やろな。しかし、相手は車の運転をしたことがない小学生やで? 速さっていうのは、基本的に目に見えない、抽象的な概念や。新幹線に乗ると時速300kmで走る。新幹線の窓から外を見るとああ、速いなーと感じるやろう。けど一方、飛行機に乗ると時速900km以上でるのやけど、飛行機の窓から外を見ても、新幹線より3倍速いとは感じられんやろう。もちろん、わしの時代にはスピードメーターなんてなかったんやで。速さの概念はすでにあったけどな。

̶( やっぱりこのじいさん、紀元前の人間だという設定は崩さないんだ......)

ピ: あ? なんか言いたげやな?

環: いや! 大丈夫です! 続けてください!

ピ: 速さ、時間、道のりの三人組のうち、いちばん具体的なもの、目に見えやすいのは道のりや。時間は目に見えないけど、時間が長いとか短いとか言うやろ? そういう意味で、時間の抽象度は中くらいや。そして速さがいちばん抽象的になる。

問題を解くときは、単純に、具体的なものから図にすればいい。

まずは道のりや。これでほとんどの問題は解ける。それで上手くいかなかったら次点で時間。小学校レベルやとこれでじゅうぶんやろ。速さを図示して解きやすくなる問題は、小学校レベルだとほとんどないんやないか。算数も数学も、実は頭で考える必要はあまりない。図にして、目で考えればいいんや。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷主は「

ワールド

UBS資産運用部門、防衛企業向け投資を一部解禁

ワールド

米関税措置の詳細精査し必要な対応取る=加藤財務相

ワールド

ウクライナ住民の50%超が不公平な和平を懸念=世論
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中