算数嫌いな人たちに共通する「苦手な単元」にこそ、数学の神髄があった
環: でも、概念の本質的な理解をせずに問題が解けるようになっても、意味がないと思いま......
ピ: だから、わしは理解するななんて言うとらんで。言いたいことは3つ。
1つ目は、抽象的な数式操作には、必ずしも深い理解が必要ではないということ。分数の足し算にケーキは必ずしも必要ではない。いいとか悪いとかやないで。事実としてや。教科書に載っている数式とは、偉大な数学者たちが一生をかけて証明してくれたものや。完全に理解しようと思ったら、これらの偉大な数学者に並ぶくらいの努力が必要や。そうでないなら、適当なところでありがたく使わせてもらえばええ。
2つ目は、抽象的な概念を理解するには、具体化が必要だということ。この速さの問題の場合だと、目に見えるように図示することが具体化や。
3つ目は、何を図示すればいいか困るなら、単純に具体的なものから図示すればええ。具体的なものとは、目に見えやすいものや。速さの単元なら道のり、食塩水の濃度の問題やったら食塩やな。初心者は間違っても、速さや濃度そのものを図示しようとしてはあかん。
環: なるほど。今日の授業で速さと食塩水が出てきたら使ってみます。目に見える、具体的なものから図示して、目で考えればいいんですね!
̶ つい話し込んでいる間に、夕方の授業の時間が近づいていた。僕は簡単にお礼を言うと、急いでその場をあとにした。しばらくしてから振り返ると、すでにピタゴラスの姿はなかった。おかしいな。視界がひらけたまっすぐの道なのに、いったいどこへ消えてしまったんだろう。