算数嫌いな人たちに共通する「苦手な単元」にこそ、数学の神髄があった
環: いやでも、ケーキの絵で通分を表現しようとしたら、それは不可能じゃないですけど、複雑でごちゃごちゃしちゃいますし、いちいち絵を描いていたら時間がかかりすぎますよ。
ピ: それはそのとおりや。べつに、絵を描かずに数式を書き出すのを悪いとは言っとらん。むしろ、苦労して絵を描かなくても素早く簡単に計算できることこそが、算数や数学の素晴らしいところや。
ただな、ここで戸惑う子は多いってことや。さっきまで具体性の世界で説明しようとしていた先生が、突然抽象性の世界で話をしだすと戸惑ってしまうわけや。眼に見える具体的なものを離れても、正しい答えを導き出せるのが抽象性の世界なんやけどな。
環: 分数は、小学校の算数のなかでも抽象性が高い単元なので、具体性の世界から切り替えられず苦手意識を持つ子が増えるということですね。
ピ: なんでお前がまとめるねん。それわしが言うべきセリフやろ!
環: 僕もちょっとわかってきたんですよ。速さについても、抽象性が問題なんですか?
ピ: せや。自分、「速さ」の単元で算数嫌いがはじまるゆうたやないか。
環: そうなんです。小学6年生の速さの単元がよくわからなくて算数が嫌いになると、たいていそのまま数学嫌いに突入ですね。トラウマのはじまりというか。
確かに「速さ」の単元は、算数の集大成という一面はあるんですよ。いままで習った四則演算はもちろん、分数小数にkmからmへみたいな単位変換、時計の読みかたとかが複合されていて、どこかに知識の穴があると、非常に苦労します。
ピ: かといって、いままでの算数を復習すれば、速さの問題も解けるようになるわけでもないやろ?
環: はい。そこまでの算数を復習して、たとえ速さの公式を憶えたとしても、ちょっと複雑な文章題だと手が出なくなっちゃうんです。
ピ: じゃ、なんで速さの単元で算数に行き詰まっちゃうのか、特に文章題が苦手になっちゃうのか、教えたろか?
̶ ピタゴラスは勝ち誇った眼で僕を見る。
環: なんか悔しいですけど、お願いします。
ピ: それはな、......それは、お前の教えかたが悪いからや。
環: いや、そんなオチじゃ話が先に進まないですよ。
ピ: まあまあ焦るな。
この問題だったら、小学生にどうやって教える? いちおう、速さの公式3つは知っているものとするで。
環: この問題は、図に描くとわかりやすいですね。
家から駅まで12km、それを時速4kmで歩いたので、行きにかかった時間は12÷4=3で3時間。
行きと帰りで合計5時間かかっているので、帰りにかかった時間は5-3=2で2時間。12kmの道のりを2時間で帰ったので、帰りの速さは12÷2=6で時速6kmになります。
ピ: なんでやねん!