最新記事

数学

算数嫌いな人たちに共通する「苦手な単元」にこそ、数学の神髄があった

2021年11月17日(水)18時36分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

環: えっと......割り算......かな......?

ピ: 惜しい。

環: え?

ピ: 惜しいなぁ。いい線いっとるんやけど、もし割り算がそれらの単元の苦手を生み出しているなら、割り算を練習したら分数や速さが得意になるん?

環: 残念ながら、そうはならないと思いますよ。計算でつまるとかじゃなくて、もっとこう、本質的な理解をしてもらえないというか......

ピ: せやろ。分数、割合、速さで算数嫌いが生まれる理由は、もっと根源的や。わかるか?

― ピタゴラスはニヤついて僕の眼を覗き込んだ。

ピ: それは、分数や速さが抽象的だからや。

̶ また出てきた。「抽象的」だ。

環: それ、どういうことですか?

ピ: 分数からいってみよか。この問題やったら、小学生にどう教える?

211112syo_math02.png

環: えーと、通分ですね。分母が5と3で違うので、このままでは足し算できない。だから分母を15に揃えます。

211112syo_math03.png

ピ: なんでやねん!

環: え、これであってますよ。

ピ: そういう話やない。わしは、分数を習っている小学生の気持ちを代弁したんや。

環: だから、小学生にもわかりやすく説明しているつもりですけど......。

ピ: ちゃうちゃう! 小学生の気持ちになるとな、いま生徒は、世界が変わったことに気づいていないんや。

環: 世界が変わった?

ピ: そう、小学生に分数を最初に教えるとき、学校の先生も、自分も、わかりやすく身の回りの見えるもので説明しようとするやろ。例えば、1/5ならケーキを5等分した1つ分、2/3ならケーキを3等分した2つ分、みたいな感じや。

ちょっと、1/5のケーキと2/3のケーキを絵に描いてみい。いいか、下手でも適当でもいいから、必ず自分で描くんやで!

環: えーと、こんな感じですかね。

211117syo_math04.jpg

ピ: そうそう、分数を習いはじめたとき、算数の教科書にはこのように、ケーキの絵が描いてある。ケーキという、目に見える身近なものを使って分数を理解してもらおうということやな。これが具体性の世界や。

ところで、今度は、1/5+2/3をケーキの絵にしてみ。

211117syo_math05.jpg

環: うーん、さっきの絵とあまり変わりがなくなってしまいますが......。

ピ: なんでやねん!

環: え、いまツッコミどころですか?

ピ: そうやない。わしは分数の足し算を習った小学生の気持ちを代弁しているんや。先生の授業をしっかり聴いた真面目な小学生の頭の中には、ケーキの絵が浮かんでいる。いままさに、自分が描いた絵や。この絵のどこを見て、分母を15で揃えようなんて発想出てくる? なのに自分はいきなり通分する数式を書き出した。だから「なんでやねん!」て言いたくなるんや。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米大統領とイスラエル首相、ガザ計画の次の段階を協議

ワールド

中国軍、30日に台湾周辺で実弾射撃訓練 戦闘即応態

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、主力株の一角軟調

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中