最新記事

日本株

衆院選後の株価、明暗が判明するのは2週間後?

2021年10月29日(金)19時11分
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所)
ハロウィーン・イメージ

ハロウィンと総選挙が重なる今年、株価はどこへ行く? kobeza-iStock.

<日経平均の「ハロウィン効果」、ハロウィンと総選挙が重なる今年はどう出るか>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2021年10月25日付)からの転載です。

日米株式のハロウィン効果

株式市場にはアノマリーと呼ばれる経験則がいくつかある。有名なのは「セル・イン・メイ」(5月に株を売れ)、「4月効果」(4月の日本株は上昇しやすい)、「1月効果」(1月の米国株は上昇しやすい)などだ。いずれも明確な根拠は無いが、よく当たるとされている。

「ハロウィン効果」もアノマリーのひとつで、「毎年10月31日のハロウィンの時期に株価が低くなり、翌年の春頃にかけて上昇しやすい」というものだ。昼の時間が短くなる時期は投資家が弱気になり株価が下落しやすい一方、冬至を過ぎると投資家が楽観的になるため株価も上昇しやすいなど諸説あるが、はっきりとしたことはわかっていない

nissai20211029175901.jpg

実際、2000年以降について各月末から6ヶ月後の日経平均の騰落率(各月20回ずつの平均騰落率)を調べると、10月末から6か月が7.1%で最も高かった。しかし、これだけでは偶然ある年の騰落率が非常に高く平均値を引き上げたのかもしれない。

そこで上昇・下落した回数と各々の騰落率を確認すると、10月は20回のうち15回上昇で勝率トップとなった。上昇した15回の平均騰落率は12.9%だ。日経平均のハロウィン効果は信じるに値するかもしれない。

米国株でも同様に調べたところ、NYダウの平均騰落率は10月から6か月が5.9%で最も高かった。また、上昇・下落回数は12か月で単独トップの17勝3敗で、当然、勝率でも10月が最も高い結果となった。

nissai20211029175902.jpg

今年のハロウィンは衆議院総選挙と同日

今年もハロウィン効果を期待したいところだが、ハロウィン当日の10月31日は衆議院総選挙の投票日と重なる。コロナ禍で政治への関心が高まっている中では特殊ケースともいえ、過去の経験則が当てはまらないかもしれない。

国政総選挙に絡むアノマリーに「選挙は買い」がある。「解散から投票日までは株価が上昇しやすい」とされ、背景には選挙戦で各党が大型の経済対策や社会保障制度の充実など"明るい未来"を掲げることがあるようだ。

では、投票日以降はどうか。2000年以降7回あった衆議院総選挙について、投票日直前の日経平均を100として、その後の騰落を示したものが図表3だ。株価が投票直前より高い状態を維持し続けたのは7回のうち3回のみだ。この結果を見る限り、総選挙後に株価が上昇し続けるとは言い切れないようだ。

より詳しく見ると、1週後や2週後の株価が高い場合は12週後にかけてさらに上昇する傾向があった(2012年、2005年、2017年)。2012年はアベノミクス始動、2005年は郵政解散で、「日本が変わる」と強く印象付けられた海外投資家の資金が流れ込んだ。

一方、総選挙の直後に株価が下落した場合は、12週後まで軟調な展開が続いたり(2009年)、投票前の水準程度までしか株価が戻らなかったりした様子も見られる(2003年)。

2000年と2014年は総選挙後の株価が安定しなかった。因果関係ははっきりしないが、与党第一党の議席数が4議席減にとどまった2014年は4週後に一旦下落した株価が再び上昇したのに対して、38議席減となった2000年は12週後にかけて株価の下落率が拡大した。

nissai20211029175903.jpg

国内では新型コロナウイルスの新規陽性者数が目に見えて減少し、経済活動の段階的な再開が進む。一方、原油価格高騰など世界的な物価上昇が消費意欲や企業業績を圧迫しかねず、これまで順調だった景気回復に影を落としている。

今年もハロウィン効果がみられるかは来春にはっきりするが、まずは選挙結果とその後の株価に注目しておきたい。

1220ide.jpg[執筆者]
井出真吾(いでしんご)
ニッセイ基礎研究所
金融研究部 上席研究員 チーフ株式ストラテジスト

20241008issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年10月8日号(10月1日発売)は「大谷の偉業」特集。【保存版】ドジャース地区Vと初の「50-50」を達成。アメリカは大谷翔平をどう見たか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルに向けミサイル発射 約200発と

ビジネス

AIはインフレに複雑な影響、生産性向上に寄与=クッ

ワールド

アングル:イスラエル格下げ、今後も続く公算大 紛争

ビジネス

米建設支出、8月は0.1%減 一戸建て住宅が急減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 2
    ジェットスキーのロシア兵を、FPVドローンが「排除」...背後から追跡、爆発するまでの緊迫映像をウクライナが公開
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    欧州でも「世紀の豪雨」が町を破壊した...100年に1度…
  • 5
    KATSEYEが韓国ハイブと米ゲフィンの手でデビュー、K…
  • 6
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 7
    イランがイスラエルに報復できる手段は限られている…
  • 8
    年収600万円、消費者金融の仕事は悪くなかったが、債…
  • 9
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 10
    ドイツもやってる! キルギスなどロシア周辺国に「違…
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッション」に世界が驚いた瞬間が再び話題に
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 5
    白米が玄米よりもヘルシーに
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    50年前にシングルマザーとなった女性は、いま荒川の…
  • 8
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 9
    【クイズ】「バッハ(Bach)」はドイツ語でどういう…
  • 10
    欧州でも「世紀の豪雨」が町を破壊した...100年に1度…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 4
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 5
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンシ…
  • 6
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中