比大統領選有力候補ボンボン・マルコスに学歴詐称疑惑 オックスフォード大卒はフェイク?
しかし「暗黒時代」を知らない若い世代にとってマルコス元大統領は「強い指導者」として認識されているといい、同じく強い指導者として麻薬関連犯罪の取り締まりなどを率先してきドゥテルテ大統領の各種政策を継承すると主張しているボンボン・マルコス氏へ「強い指導者」を期待する声が多いと分析されている。
フィリピンでは学校で使用される教科書にマルコス前大統領政権下での「暗黒時代」への言及、評価がないこともこうした若者の間でボンボン・マルコス氏への支持拡大の一因とされている。
「反対勢力によるフェイクニュース」として一蹴?
今回の「オックスフォード・フィリピン協会」によるボンボン・マルコス氏の学歴詐称の指摘は、同氏が大統領選への立候補を表明した後という時期であり、同協会は否定するものの何らかの政治的意図があったとの見方も根強い。
学歴詐称の指摘がどこまでボンボン・マルコス氏の選挙活動に影響を与えるか現段階では不明だが、熱狂的な支持者と高い支持率に支えられている同氏だけに「反対勢力によるフェイクニュース」として片づけられる可能性もある。
政権交代を目指す野党候補の間でも世論調査で3位につけている大統領候補のマニラ市のイスコ・モレノ市長がボンボン・マルコス氏に対して「過去を忘れてはならない」と警告するとともに、同じく「反ドゥテルテ」の立場である野党「自由党」などで組織する連合体「イサンバヤン」の大統領候補であるレニー・ロブレド副大統領を批判するなど、非難合戦や情報戦がすでに始まっている。
こうした状況を地元紙「マラヤ」は10月11日「戦いは始まったばかりだ。辛辣なコメントや非難の応酬は来年5月まで続く。これがフィリピン流の政治だ。もしこれを健全な民主主義と主張してそれに慣れてしまっているなら、その考えは改めるべきだ」と警鐘を鳴らした。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など