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中国金メダル38でもなお「発展途上国」が鮮明に

2021年8月11日(水)19時03分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

「巧」は個人のテクニックをレベルアップさせれば良いという種目で、「難」は難易度の高さを表し、たとえば飛込とかウェイトリフティングなどを指す。

「女」こそが注目すべき中国の特徴だが、世界各国を見渡した時にどう見ても男性の方が体力的には頑強で、プロスポーツも男性を中心としたものに大金が動いている。オリンピックでも女性は体力的に弱いということに目を付けて、中国は「女性選手」を集中的に育て上げることに力を注いだ。女性だろうと男性だろうと、金メダルに変わりはない。

「少」は、競技人口が少ない(関心がそれほど高くない)種目の意味らしく、たとえばトランポリンなどがそうで、サッカーで金メダルを獲ろうとトランポリンで獲ろうと、「金」に変わりはないということのようだ。

このように「金の数を競う」ことにオリンピックの目的が集中し、その割に中国における「スポーツ」というものに対する浸透度とか憧れとかは薄いように思われる。

見えてきた「発展途上国」中国の真相

そこで、ハッとした。

「中国はまだ発展途上国なのだ」と痛感したのだ。

中国のGDPはたしかにアメリカに次いで大きく、2010年には日本を追い抜いてしまった。しかし一人当たりGDPとなると全く異なる。

IMF(国際通貨基金)のデータによれば、2020年における世界の1人当たり名目GDP 国別ランキングは以下のようになる。図表はGLOBAL NOTEにある表記を用いた。

  図表2:一人当たりGDPの主要国ランキング 
endo20210811163302.jpg
IMFデータより

このようにアメリカが世界5位であるのを始めとして、G7先進7ヵ国の一人当たりGDPは28位以上となっている。もっとも、EUの中ではドイツが強く、G7の中ではイタリアが弱いという現実も見えてきて、イタリアだけが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に正式に加盟しているのもうなずける。

しかし、その中国の一人当たりのGDPは世界第63位に過ぎないのだ。

明らかに先進国の仲間入りはしていなくて、ロシア同様、新興国で作るBRICS集団の中にあることが見えてくる。

つまり一人当たりGDPを見ると、中国は発展途上国の範疇に入るのだ。

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