最新記事

中国

中国金メダル38でもなお「発展途上国」が鮮明に

2021年8月11日(水)19時03分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

日本は金メダルでは3位(27)で、メダル総数(58)では5位であるにもかかわらず「メダルラッシュに沸く日本――!」と絶叫する報道が目立ち、奇妙な違和感を覚えていた。人口14億人を超える中国と1億人強の日本では母数が違うので日本がここまで多くのメダルを獲ることは確かに称賛に値するが、その「騒ぎ方」に、母数の違いではない何かを感じ取ったのだ。

中国が金メダルを獲ったのは主として個人競技のみ

その違和感の正体を突き止めたくて、先ずは中国が獲得した金メダルの種目を考察してみることにした。

そのために、中国が獲得した金メダルのリストをオリンピックのサイトから拾い上げて、下記の図表1を作成してみた。

  図表1:中国が獲得した金メダルの競技種目と数(男女別)
endo20210811163301.jpg
TOKYO2020のウェブサイトから拾い上げたデータ

図表1からわかるように、金メダルを獲っているのは、ほとんどが個人競技だ。

もちろん女子クオドルプルスカルといった例外もあるが、最も金メダル数が多いのがウェイトリフティングと飛込で、いずれも7個も金メダルを独占している。

次に多いのが卓球と射撃(各4個ずつ)、そして体操と競泳(各3個ずつ)だ。

いずれも、14億人いる中国人の中で、誰か一人が努力し才能に恵まれていれば戦える種目である。

野球とかサッカーとかバスケットボールといった団体競技に関しては、中国は完全にと言っていいほど、極端に弱いのが特徴だ。

次に特徴的なのが男女の金メダル獲得数の違いである。

男子13に対して女子22と圧倒的に多い。

これは改革開放後の中国が、遅ればせながら国際社会に仲間入りしようとしたときに、世界とのあまりのギャップを埋めようもなく、どういう種目なら勝てるかを研究した結果がもたらしたもので、巷ではこれを「小・巧・難・女・少」戦略と称している。

「小」はたとえば競技種目がサッカーやバスケットボールあるいは野球のようにプロスポーツ化したスケールの大きなものでなく、一人の若者が特殊な才能を持っているだけで、大金を注がずに勝てる競技のことである(中には卓球のように球が小さいということを指しているという分類の仕方もある)。まず、そこに注目して中国選手を育てる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月経常収支は2兆8335億円の黒字=財務省

ワールド

中国機の安全阻害との指摘当たらず、今後も冷静かつ毅

ビジネス

バークレイズ、英資産運用大手エブリン買収を検討=関

ワールド

独仏首脳、次世代戦闘機開発計画について近く協議へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中