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モーリー・ロバートソンが斬る日本メディアと国際情勢

Develop a Global Mindset

2021年7月22日(木)11時35分
モーリー・ロバートソン

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グレタ・トゥーンベリ(中央)を筆頭に若者は社会運動に積極的(20年2月、英ブリストルの気候変動デモ) PETER NICHOLLSーREUTERS

また、気候変動やコロナ禍などグローバルな問題はグローバルに解決しなければ駄目だという意識も強い。そのためにライフスタイルの変化や、環境・人権に悪いブランドのボイコット、ソーシャルメディアでのシェア、選挙での投票などで団結して立ち上がり、声を上げている。生きるためにとにかく戦うしかないという世代が育ってきているのです。

格差の問題も大きいです。最近もアマゾン創業者のジェフ・ベゾスなど多くの大富豪がほとんど納税していない、という告発がありましたが、格差が進んで「超格差」になりつつある。豊かな国でも超格差が進んでいて、ほんの一部の人たちだけが優遇されている。

インドや中国、途上国の若者の間でも欧米のZ世代と同期するような波が生じると思います。彼らはスマートフォンを持っている。冷戦時代にソ連の若者が情報封鎖のなかダビングを重ねたローリング・ストーンズやビートルズのカセットを警察にばれないようにこっそり聴いていたのとは違うわけですよね。情報そのものは少なくともVPN(仮想プライベートネットワーク)を使えば鉄のカーテンみたいに遮断し切れない。

資本主義の動きは国家横断的です。京都でウーバーイーツの配達人の給与が3割カットされる一方、中国でも資本家の横暴により若者が朝9時から夜9時まで週6日働かされ、やる気のないライフスタイルをわざと選ぶ「寝そべり世代」が出てきています。相通じる部分があるのだと思います。こうしたことから、若者が大人に分からない独自のサブカルチャーをつくって不満を発散させる動きは、これから途上国にも出てくる気がしますね。

世界のトップ1%のために経済の仕組みがつくられていて、世界人口78億人の巨大なピラミッドの下に行けば行くほど負荷がかかり、割を食うようになっている。世界を覆った新自由主義的経済がサステナブルではないことのゆがみが、人道、格差、気候変動、ジェンダー、寛容・不寛容といった軸でこれから露骨に出てくると思います。

それを踏まえると、民主国家のZ世代の若者は団結してスクラムを組むようにソーシャル・デモクラット、つまり社会民主主義に向かうのではないでしょうか。そして気候フレンドリーを志向し、大企業へは法人税増税、富裕層には累進課税の強化を、という方向に世界が強く振れる可能性がある。ただ同時に、扇動によって絶望し、ファシズムの方向に向かう人も多くなるし、ポピュリズムの方向にも進むかもしれない。そうした民主主義の揺れが来るでしょう。

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