モーリー・ロバートソンが斬る日本メディアと国際情勢
Develop a Global Mindset
結論としては海外情勢の全体像を把握するには残念ながら日本語のニュースだけでは駄目、ということです。また日本の本質的な問題について議論の素材をそろえるにも、英語で日本に関する調査報道を読み、日本語で出ている記事と読み比べる必要があります。日本語記事で省略された部分を見つけ、そこに何か本質があるのだろう、と気付くわけです。
そうした見方を養うにはどうすればいいか。僕は失敗や読み間違いを繰り返しながら、場合によってはちょっと痛い目に遭いながら、少しずつ良い記事をピックアップできるようになりました。
あとはいろいろな人と話をするのがいいかもしれない。みんな情報に偏りがあるし、基礎知識が間違っている人もいる。新型コロナウイルスが武漢発の生物兵器だと信じてしまっている人もいる。でもその人がそこに至った道筋を聞くのが面白い。自分を振り返ることにもなりますよね。自分ももしかしたら結構、いろいろなこと信じ込んでいるかも、と。
生身の人が熱く語るとき、そこにはその人にとっての真実がある。だから例えば、居酒屋でみんなワーッとしゃべっているところで、スナックの経営者のようなマインドで聞き上手に回るのはどうでしょう。そうすると人々の性格や心理の輪郭みたいなものが分かる。要は、他人の話を聞くという習慣を持つことですね。
共感できない意見も相当出てくる。だけど、どうしてそう思うようになったのだろうと考えることで自分の中にパースペクティブ(物の見方)ができ、内省できる。それをやることで僕はニュースの咀嚼の仕方がだいぶ変わりました。
そういう観点を持つことが教養なのかもしれません。そうしてニュースの点と点がつながって線になれば、国際ニュースが遠い場所のおとぎ話でなくなり、自分のなすべき、考えるべきことがおのずとはっきりしてくる。ニュース同士が細切れになった今の日本のメディア環境では、受け手が自分でそうやってコンテクスト(文脈)を見いださなくてはいけません。そうした意味で、世界の問題点を総ざらいできる今回の特集はある程度「使える」と思います。
「Z世代」が世界を変える
では実際今後世界はどう動くか。非常にはっきりしたトレンドが見えていて、カギは1996年以降生まれの「Z世代」です。先進国の彼らは生まれてからずっとグローバリズムにおける経済的な息苦しさを感じてきました。中産階級は崩壊し、親よりいい生活は望めない。宅配業の運転手など、単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」労働の比率も高い。