最新記事

国際情勢

モーリー・ロバートソンが斬る日本メディアと国際情勢

Develop a Global Mindset

2021年7月22日(木)11時35分
モーリー・ロバートソン

結論としては海外情勢の全体像を把握するには残念ながら日本語のニュースだけでは駄目、ということです。また日本の本質的な問題について議論の素材をそろえるにも、英語で日本に関する調査報道を読み、日本語で出ている記事と読み比べる必要があります。日本語記事で省略された部分を見つけ、そこに何か本質があるのだろう、と気付くわけです。

そうした見方を養うにはどうすればいいか。僕は失敗や読み間違いを繰り返しながら、場合によってはちょっと痛い目に遭いながら、少しずつ良い記事をピックアップできるようになりました。

あとはいろいろな人と話をするのがいいかもしれない。みんな情報に偏りがあるし、基礎知識が間違っている人もいる。新型コロナウイルスが武漢発の生物兵器だと信じてしまっている人もいる。でもその人がそこに至った道筋を聞くのが面白い。自分を振り返ることにもなりますよね。自分ももしかしたら結構、いろいろなこと信じ込んでいるかも、と。

生身の人が熱く語るとき、そこにはその人にとっての真実がある。だから例えば、居酒屋でみんなワーッとしゃべっているところで、スナックの経営者のようなマインドで聞き上手に回るのはどうでしょう。そうすると人々の性格や心理の輪郭みたいなものが分かる。要は、他人の話を聞くという習慣を持つことですね。

共感できない意見も相当出てくる。だけど、どうしてそう思うようになったのだろうと考えることで自分の中にパースペクティブ(物の見方)ができ、内省できる。それをやることで僕はニュースの咀嚼の仕方がだいぶ変わりました。

そういう観点を持つことが教養なのかもしれません。そうしてニュースの点と点がつながって線になれば、国際ニュースが遠い場所のおとぎ話でなくなり、自分のなすべき、考えるべきことがおのずとはっきりしてくる。ニュース同士が細切れになった今の日本のメディア環境では、受け手が自分でそうやってコンテクスト(文脈)を見いださなくてはいけません。そうした意味で、世界の問題点を総ざらいできる今回の特集はある程度「使える」と思います。

「Z世代」が世界を変える

では実際今後世界はどう動くか。非常にはっきりしたトレンドが見えていて、カギは1996年以降生まれの「Z世代」です。先進国の彼らは生まれてからずっとグローバリズムにおける経済的な息苦しさを感じてきました。中産階級は崩壊し、親よりいい生活は望めない。宅配業の運転手など、単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」労働の比率も高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃訓練開始 演習2日目

ワールド

キーウ郊外で停電続く、ロシア空爆後 住民は避難所で

ワールド

香港、民間住宅用地供給が増加見通し 市場の回復基調

ワールド

ゼレンスキー氏「プーチン氏を信頼せず」、勝利に米の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中