最新記事

中国

中国共産党100周年、習近平の「今後」を予測する

XI’S TOP AGENDA

2021年7月1日(木)07時00分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)
習近平

3期目を視野に権力基盤を強化したい習近平だが対米関係から冬季五輪まで難題は山積している THOMAS PETER-REUTERS

<世界がその動きを注視するが、いま何を狙っているのか。人権状況はさらに悪化する、米中貿易戦争は当分終わらない、頭痛のタネが2つある......。4つの観点から今後を予測する>

世界は今やアメリカではなく中国を中心に回っているかのようだが、当の中国は今年後半以降、どうなっていくのだろうか。

4つの観点から予測すると――。

国内の重点課題

まずは7月1日の中国共産党結党100周年を盛大に祝い、党の、そして党の指導下にある国家の長寿と繁栄を習近平(シー・チンピン)国家主席の業績に重ね合わせる(なにしろ2012年以来、党も国家もこの男の指導下にある)。

それができたら来年秋に予定する第20回党大会に向けた宣伝戦を開始し、習の続投(事実上の永久政権化)を正当化するイデオロギーを強化する。目指すは党大会で3選を果たし、自分に忠実な者を主要ポストに就けることだ。

党内の反対派を力で抑え付けるのは簡単だが、問題は14億の国民が個人崇拝とワンマン支配の復活を受け入れるかどうか。

中国共産党の結成に加わり、中華人民共和国の「国父」となった毛沢東が死ぬまで権力を手放さず、結果として「文化大革命」の悲劇を招いた事実を、国民は忘れていない。

もしも国民の納得が得られなければ、習が権力を維持する道はただ1つ。弾圧と粛清の恐怖政治だ。

それを熟知している習は今後も、せっせと自分の腹心を地方の党書記などに登用する一方で、「汚職追放」の名目でライバルの排除を進めることだろう。

人権状況は悪化

習が権力を維持するには愛国心と民族主義の鼓舞が一番だ。アメリカのバイデン政権は中国に対する強硬姿勢を続けるようだが、皮肉なもので、これが習政権を助ける。

香港における「自治」の否定と民主派への弾圧や、新疆ウイグル自治区におけるジェノサイド(民族大量虐殺)に反発するアメリカは、とりあえず同盟諸国を結集し、共同で中国に制裁を科すという宣言を出すことに成功した。

戦術的な勝利には違いないが、その代償は大きい。

中国側はアメリカとその同盟諸国が使った「ジェノサイド」や「強制労働」という語を逆手に取り、欧米諸国の言うことは嘘ばかりで、そういう主張の裏には邪悪な意図があると反論し、自らの議論を巧みに国民に売り込んだ。

習にとっては願ってもない状況だ。アメリカを中心とする外敵が中国の台頭を阻止しようとしている以上、それに対抗するには強力なリーダーシップが必要で、それを担えるのは自分しかいない。そういう理屈になる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン

ビジネス

アングル:トランプ政権による貿易戦争、関係業界の打
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中