「中国に甘いバイデン」は誤解、対中改善しようにも手は限られている
CAN BIDEN RESET CHINESE RELATIONS?
ただし台湾問題については、緊張緩和のシグナルを送る可能性が高い。バイデン政権の国務長官に指名されたアントニー・ブリンケンは昨年7月のブルームバーグとのインタビューで、台湾の民主主義を守るためにバイデンは助力を惜しまないと述べた上で、こう指摘している。「皮肉なもので、こと台湾に関してはアメリカも中国も過去数十年間、実にうまく対処してきたと言える」
外交官らしい微妙な言い回しだが、要するに台湾との関係はトランプ政権以前の状態に戻し、現状維持を最優先するということだろう。既にトランプ政権が台湾に大量の兵器を売却している以上、改めて中国政府の怒りを買うような兵器売却を承認することもないだろう。
いずれにせよ、中国との間で台湾をめぐる新たな軍事紛争を避けたければ、バイデン政権は微妙な綱渡りを続けなければならない。まずは「一つの中国」という伝統的なアメリカ政府の立場に変化はなく、台湾の「独立」は支持しないということを中国に伝え、安心させなければならない。その一方、中国が台湾に対して軍事力を行使すればアメリカは断固として対応するということも、習近平(シー・チンピン)国家主席に明確に伝えなければならない。
バイデン政権発足から数カ月の間に起きる最も重大な変化は、外交的な対話ルートの復活だろう。双方が大物の特使を起用し、気候変動や新型コロナウイルス、核不拡散といった問題を協議することになろう。
言うは易しの外交戦略
他方、以前から同盟関係にある欧州やアジア諸国との連携を強め、アメリカの対中戦略への理解を求めることも必要だ。就任早々に、バイデンがリモート会議で各国首脳と親密な協議をするのは間違いない。
国力の強化、広範な共同戦線の構築、対決と協力の二正面作戦というバイデン政権の基本戦略は、机上では長期的に有望な戦略に思える。だが実行するのは容易ではない。内政面の改革と新規投資によるアメリカの再建という構想には、旧守的な共和党からの反発も予想される。
選挙で負けたとはいえ、一国主義と保護主義と排外主義を掲げるトランプ政治が4年間続いた以上、同盟諸国がアメリカとの関係改善に慎重になるのは必至だ。現にEUは昨年末、アメリカの反対を押し切って中国との包括的投資協定で基本合意している。今や経済面の結び付きに関する限り、アメリカよりも中国とのパイプが太くなっている国は少なくない。