「私は黙っていられなかった!」 バイデンに勝利もたらした女性票
ノースカロライナ州の郊外に住むデニーズ・オートンさん(46)は元ソーシャルワーカーで今は引退しているが、このほど迎えた結婚記念日に、夫がトランプ氏に投票したことを明かしたという。「殴られたような衝撃だった」と涙ながらに話す。
オートンさんは綿花畑に囲まれた広大な農場で暮らす。自分と13歳の娘は、夫と15歳の息子と意見が対立している。「息子は15歳だから当然、父親の言うことを聞く。トランプの即興の言動を面白いと思っている。本当は弱い者いじめをしているだけなのに」
障害者と働いていたオートンさんは、夫の家族――やはりトランプ氏支持者――がバイデン氏のきつ音癖をからかっているのを耳にして耐えられなかった。
オートンさんは、トランプ氏は女性を「蔑視」していると語る。台所にはバイデン氏とハリス氏のステッカーシートの上に聖書を乗せ、自分の車の後ろには「STD―ドナルド(トランプ)を止めろ。感染を拡大させるな」と書かれたステッカーを貼っている。
だがフェイスブック上ではもっと慎重にふるまう。オートンさんが属するコミュニティーはトランプ氏支持者が大半を占めるからだ。
ノースカロライナ州では、オートンさんのような大卒白人女性の半数以上がバイデン氏に投票した。こうした層のトランプ氏支持率は16年に比べて8%ポイント下がった。
農村でもトランプ氏支持率低下
16年の大統領選でトランプ氏の最も強固な支持層だった農村部の女性の間でも、その支持率は下がった。
エジソンの出口調査によると、全米でトランプ氏の農村部の得票率は54%と、16年から7%ポイント下がった。農村部の女性のバイデン氏支持率は、わずかだが50%を上回った。
そんな1人がレベッカ・シーデルさん(37)だ。ペンシルベニア州で夫とともに小さな畜産農家を営んでいる。
彼女はずっと、共和党の父の考え方に近かったが、トランプ氏が大統領になってから共和党を離れ、民主党に登録した。人種差別が台頭していると感じたことや、トランプ氏の保護主義的な貿易政策がその理由だ。
今年は自身や母親を含めて家族全員が新型コロナに感染し、そうした懸念が最高潮に達した。
シーデルさんは先頃、近くの農業用品店で男性グループが一人もマスクをせずにしゃべっているのを見かけた。
「(マスク着用の有無は)政治姿勢の表明になった。マスクをしていればトランプ支持ではない、と考える人もいる」