最新記事

人種差別

木に吊るされた黒人男性の遺体、4件目──苦しい自殺説

Four Black Men Found Hanged in LAST Month

2020年6月18日(木)18時05分
ハレダ・ラーマン

地元メディアによると、ロサンゼルス郡監察医事務所は当初、2度の検視でフラーの死を自殺と判定したが、その後に撤回。捜査が続行されることになったため、死因の判定も延期されたという。

当初の判定については、フラーの遺族が自殺は考えられないとして、検視のやり直しと徹底した捜査を求めていた。郡の捜査当局の拙速な判断は市民の怒りも買い、パームデールでも抗議デモが広がった。

これに押される形で、ロサンゼルス郡のアレックス・ビジャヌエバ保安官は記者会見を開き、他殺の可能性も視野に入れて、フラーの死を捜査すると発表。カリフォルニア州司法長官事務所とFBIの公民権部門が捜査を監視すると付け加えた。

ロサンゼルス郡の主任監察医ジョナサン・ルーカスは、保安官の説明を補う形で、「慎重を期すために当初の結論を撤回して、より深く捜査を行うべきだと判断し、死因の判定を延期した」が、現場には事件性を示す証拠は一切なかった、と改めて強調した。

フラーの遺族の弁護士ジェーモン・ヒックスはABCニュースに声明を寄せ、保安官事務所が「すぐさま」自殺と断定したことに、遺族と地域の人々は「激しい怒り」を感じていると述べた。

「アフリカ系アメリカ人にとって、木から吊り下げられるということはリンチを意味する。なぜこの事件が傲慢にも自殺と片付けられ、謀殺として捜査されないのか。私たちが求めているのは完全な情報開示だ」

「あなたの恋人が木に」

カリフォルニア州ではフラーの遺体が発見される10日前にも、パームデールから80キロ程離れたサンバーナディーノ郡ビクタービルで、38歳の黒人男性マルコム・ハーシュの遺体が木に吊り下げられた状態で見つかった。

ハーシュの恋人が5月31日に「あなたの恋人が木に吊るされている」と友人に知らされ、警察に通報した。

「検視官も含め、捜査官が現場に急行したが、事件性を示す証拠は見つからなかった」と、サンバーナディーノ郡保安官事務所は発表している。

保安官事務所によると、検視解剖も行われたが、法医病理学者が毒物検査の結果を待って、死因や死に至る経緯について見解を出すという。

ハーシュの遺族も、ハーシュの死が自殺と片付けられるのを懸念し、捜査当局に詳しい説明を求めている。

「自殺の可能性はどう考えてもあり得ない。私たちは都合のよい弁明ではなく、公正な裁きを求めている」と、遺族は声明を出した。ハーシュの妹ハーモニー・ハーシュはニューヨーク・タイムズに兄の死について独自に調査をするつもりだと語った。

FBIは6月15日、フラーとハーシュの両方の事件について、連邦当局が保安官事務所の捜査を精査すると発表した。

「FBIに加え、連邦検事事務所と司法省の担当部署が、パームデールとビクタービルで起きた2人のアフリカ系アメリカ人男性の縊死に関する捜査について、連邦法違反が認められるかどうか詳しい調査を進めている」

【話題の記事】
「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったので、一般の方はご注意下さい
男性190人をレイプした男、英で終身刑に その恐るべき二面性

20200623issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月23日号(6月16日発売)は「コロナ時代の個人情報」特集。各国で採用が進む「スマホで接触追跡・感染監視」システムの是非。第2波を防ぐため、プライバシーは諦めるべきなのか。コロナ危機はまだ終わっていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中