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米中関係国連安保理「新型コロナ下での停戦」決議できず WHOめぐる米中対立が影響

新型コロナウイルスとの戦いに集中するため、世界に停戦を呼びかける国連安全保障理事会の試みが行き詰まっている。写真は米ニューヨークの国連本部。3月10日撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)
新型コロナウイルスとの戦いに集中するため、世界に停戦を呼びかける国連安全保障理事会の試みが行き詰まっている。決議案の中で世界保健機関(WHO)にどう言及するか、米中が火花を散らしているためだ。14日にエストニアとドイツが代替案を示したものの、中国が難色を示してまとまらなかった。
常任理事国5カ国と非常任理事国10カ国で構成される安保理はこれまで7週間、決議案の調整を続けてきた。新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、国連のグテレス事務総長が3月23日に世界に向けて呼びかけた「即時停戦」に、効力を与えるためだ。
フランスとチュニジアが先週提示した決議案を巡る審議では、WHOへの支持を呼び掛ける文言を入れるかどうかで、中国と米国が対立。米国はWHOに言及したがらない一方、中国はこの文言を含めるよう主張した。
そこで12日、エストニアとドイツが安保理に新たな草案を提示。グテレス事務総長を支持し、人道上の観点から紛争を90日間停止するよう世界に呼びかけることに焦点を当てたものだ。WHOには触れなかった。
「われわれが欲しいのは停戦を表明する決議だ」と、米国の国連大使ケリー・クラフト氏は14日、ノースカロライナ大学チャペルヒル校政治学研究所とのオンライン会議で語り、ドイツとエストニア案への賛意をほのめかした。
「どの国がその決議を提示したかは問題ではない。重要なのは焦点が絞られたことで、停戦について言及していること、そして最も必要としている人々に人道支援が確実に届くようにすることだ」
一方、中国の外交官は匿名を条件に、WHOへ婉曲的に言及するフランスとチュニジアの決議案について、「理事国から圧倒的な支持を得ている。前進させるための最善の案だ」と述べた。「ドイツとエストニアの案を採択する可能性はない」という。
フランスとチュニジアが提示した案は、WHOの名前は挙げず、「専門的な保健衛生機関」との表現を盛り込んでいた。そのような機関はWHO以外にはない。
この案でまとまるかにみえたが、複数の外交筋によると、米政府がこれを拒否した。中国側はこの案で妥協しようとしたと、前出の外交官は話す。
世界の平和と安全保障に責任を負う安保理に、新型コロナウイルス自体への対処でできることはあまりない。しかし、外交官や専門家は、グテレス事務総長が呼び掛けた停戦を安保理が支持することで、世界を結束させることができると指摘する。
Michelle Nichols

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