最新記事

製造業

米製造業再開の尖兵となったテスラの戦い

Governors All Over the Country Are Duking It Out Over Tesla's Fate

2020年5月13日(水)17時35分
ジェフリー・マーティン

感染防止対策はできている、と言うイーロン・マスク(写真は1月、上海) Aly Song-REUTERS

<感染予防のため工場の閉鎖継続を求める地元当局の指示に逆らって、操業再開を強行したテスラ。経済再開優先のトランプもこれを後押しする>

電気自動車(EV)大手テスラが、工場の所在地であるカリフォルニア州のアラメダ郡ともめている。新型コロナウイルス感染拡大対策として工場の閉鎖を命じる郡当局に逆らって、操業を再開したからだ。企業が自治体の命令に逆らって操業を強行するのは極めて異例。テスラが自治体と揉めているのを好機と見た他の自治体からは、熱心な誘致の声もかかっている。

この戦いに、感染対策より経済再開を優先するドナルド・トランプ大統領とスティーブ・ムニューシン財務長官も参戦。テスラを応援する。トランプは12日朝、「カリフォルニア州は今こそ、テスラに工場を再開させるべきだ」とツイートした。「迅速かつ安全に再開されるべきだ!」

ムニューシンも11日にCNBCの番組に出演した際、アラメダ郡の指示に逆らってフリーモントの工場を再開し、郡に対する差し止め訴訟を起こしたマスクを支持した。

「私はイーロン・マスクに同意する」と、ムニューシンは、テスラの創業者にしてCEOのマスクによる工場再開の試みについて触れた。「マスクはカリフォルニアで最大の雇用者であり、製造業者でもある。カリフォルニア州はテスラが早く工場を再開できるように、新型コロナウイルスがらみの健康問題の解決に優先的に取り組むべきだ」

各地から移転を誘う声

11日、マスクがフリーモント工場の操業再開を発表する数分前、テキサス州グレッグ・アボット知事は、テキサス州に本社を移転してはどうかと、現在はシリコンバレーを拠点とするテスラに提案した。

「テスラの本社をネバダかテキサスに移転すれば、マスクは数十億ドルの税金を節約できるだろう」と、アボットはツイッターに投降した。

その数時間後、ネバダ州ラスベガス市のミッチェル・フィオーレ臨時市長は、テスラにネバダ・シティを本社の移転場所としてテスラに提案した。

「カリフォルニアにある工場の移転先を探しているなら、ここラスベガスの隣人は両手を広げてテスラを歓迎する」と、フィオーレはマスクに宛てた声明で述べた。もちろん、節税効果も並べ立てた。

「この地区には、どんな工場のニーズにも対応できる十分な土地がある。土地がすばらしいだけではなく、ビジネスに適した税制や規制構造も提供できる」と彼女は続けた。「さらに重要なのは、手頃な生活費ではるかに高い質の生活を従業員に提供できることだ」

こうした申し出が相次ぐ一方、新型コロナウイルス対策として都市封鎖を延長したアラメダ郡とマスクの間で緊張が高まっている。

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は州レベルでは製造業の再開を認めているが、郡や市などの自治体は事業再開にむけて独自のスケジュールを決定できる。テスラの工場があるアラメダ郡の当局は公衆衛生上のリスクが大きいとして5月末まで外出禁止令を延長した。

<参考記事>日本はコロナ危機ではなく人災だ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中