感染者数2位のニュージャージー、医師である弟から届いたマスクの写真
米ニュージャージー州で麻酔科医として働く弟から届いた「N99」マスクの写真 写真:筆者提供
<麻酔科医として働く弟のことが心配でならないが、医療関係者もN95マスクが手に入らない同地で、市民らによる「マクガイバーイング」が広がっている>
自分が生まれ育った州、ニュージャージー。新型コロナウイルスの感染者数は、ニューヨークに次いでアメリカで2番目に多い。5000人以上が死んでいる。そんな危ない地域に弟が住んでいる。
しかも彼は病院で働く麻酔科医で、運ばれてくる新型コロナウイルス患者と真っ先に接するのだ。地域の人々を守っている弟のことは誇りに思うが、彼自身がこの病気で倒れるのではないかと心配でならない。
以前から話題になっているが、特に感染が集中しているニュージャージーのような地域では、医療関係者用の個人防護具(PPE)が足りない。弟が働く病院でももちろん、ないものはない。
でも、弟たち医師はPPEが病院に入ってくるのを待っていられない。とにかく一生懸命患者の治療にあたらなくてはならない。どうにかして自分の身を守ろうとしながら。
すなわち、防護具が病院にない以上、それがないままで働くか、自費で買うか、自分で作るかしかない。
アメリカに『冒険野郎マクガイバー』というテレビドラマがある。2016年からリメーク版が放映されているが、アメリカでは80年代から愛されてきた。
連邦政府関連の秘密組織のエージェントとして働く主人公アンガス・マクガイバーは、さまざまな事件を解決するのだが、どんなエピソードでも身の回りにある日用品を使って絶体絶命のピンチを切り抜けるシーンがある。その場面があまりにインパクトが強いためか、アメリカでは極端なDIYを番組にちなんで「マクガイバーイング(macgyvering)」と言うようになった。
そして今、医療関係者がその辺のごく普通のものから防護具を作ることも「マクガイバーイング」と呼ばれているのだ。
3月上旬からN95マスクが手に入らない
弟と彼の同僚が抱えている最大の課題はマスク不足。厳密に言えば、N95という医師用のサージカルマスクが足りない。N95の「95」とは95パーセントのことで、0.1~0.3μm(マイクロメートル)の微粒子を95%以上捕集できるから、そう呼ばれている。医療関係者としてぜひとも欲しいものだが、値段が高い上、感染拡大が深刻になっているニュージャージーでは特に、3月上旬からなかなか手に入らなくなっているらしい。
そこで、医師らが「マクガイバーイング」を考え始めた。普通に手に入るものを応用して、サージカルマスクに代わるマスクは作れないものか?