最新記事

感染症対策

新型コロナウイルス院内感染で医療関係者24人が死亡 インドネシア、防護服など不足で危機的状況

2020年4月28日(火)18時36分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシアの首都ジャカルタでは感染拡大防止のため、スポーツ施設にホームレスの人びとを収容しはじめた。AJENG DINAR ULFIANA - REUTER

<世界各国で深刻な問題となってる医療のひっ迫は、人口2億6000万人の東南アジアの大国で「医療関係者の死」となって現れた>

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないインドネシアでは、治療の最前線で活動中の医師ら医療関係者24人がこれまでに感染で死亡していることが明らかになった。

ASEAN10カ国では外国人労働者の宿舎などでの集団感染が判明したシンガポールが4月27日時点で新型コロナウイルス感染最多(14423人、死者12人)となっている。一方、インドネシアは死者が765人、そして死亡率8.4%と域内最悪の状況となっている。

またASEAN加盟国全てが医療関係者の死者数を明らかにしている訳ではないものの、インドネシアは24人が犠牲となっており、おそらく域内で最も院内感染が多いとみられている。

インドネシア医師協会(IDI)は新型コロナウイルス治療にあたる医療関係者の危機的状況を国民に告知するため、順次死亡した医師、看護師などを実名と肩書を付した白黒の顔写真とともにSNSを通じて掲載している。

また4月初旬に日刊紙「テンポ」は紙面一面を使って死亡した医療関係者の顔写真を掲載して医療現場の厳しい状況を訴えた。

こうした医療関係者の死を公表するに至った背景には、国民に医師らも懸命に戦い、命を捧げているという現場の実情を強く訴えると同時に、医療関係者の置かれている窮状を理解してもらう意味も込められているという。

「テンポ」は4月17日の紙面でIDIのダエン・モハマド・ファキ理事とのインタビュー記事を掲載し、その中でインドネシアの医療現場が現在直面する問題を明らかにし、早急な対策を呼びかけた。

防護服の絶対的不足 雨合羽やゴミ袋も利用

インタビューの中で「なぜ多くの医療関係者が犠牲になっているのか」との問いに対してファキ理事は「まず、医療従事者を感染から守る防護服(PPE)が絶対的に不足している」という事実を指摘している。

感染症の治療に専門的に取り組む指定病院ですらPPEが不足しているのに加えて「それ以外の病院や小規模クリニック、個人経営のクリニック、さらに地方の医療機関などでのPPE不足は致命的な状況に直面している」ということで、PPEがない場合は医療現場で医師らはプラスチック製やビニール製の雨合羽、それすら都合がつかない場合は大きなゴミ用の袋まで代用しているケースもあるという厳しい状況を明らかにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ビジネス

英GDP、第3四半期は前期比+0.1%に鈍化

ワールド

エプスタイン資料、黒塗り公開に共和党内から批判 中

ワールド

豪ボンダイビーチ乱射事件、銃撃前に手製爆弾投てきも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中